無償ツールで設計効率の向上を体験 ―― 配線レイアウトの電磁界シミュレーションを体験する

小暮 裕明

4.接近線路のシミュレーション.

● クロストークを評価する

 複数のMSLが接近しているレイアウトでは,配線同士が電磁結合して電磁エネルギがほかの配線に漏れるクロストークが発生します.図30図23にもう1本配線を描いたモデルです.ポート1の信号が隣の配線のポート3に漏れるバックワード・クロストークはS31,またポート4に漏れるフォワード・クロストークはS41で示されます.


図30 図23MSLにもう1本配線を描いたモデル

 

 図31のように,8GHz付近まではバックワード・クロストークの方が大きいことが分かります.S31はポート1に電圧1Vの信号を加えたときのポート3の電圧を表します.図32のグラフを直読した数字が1V入力のときのクロストーク電圧値になります.


図31 バックワード・ストロークS31とフォワード・クロストークS41

 


図32 S31とS41の等間隔目盛表示

 クロストークは線路間の近接効果注9が原因です.図30の配線をさらに接近させて,クロストーク量の変化を確認してください.

● クロストークを低減するMSL構造

 MSLの電界ベクトルは,図21のように配線とその直下のグラウンド導体の間に分布します.また,近くに別の線路があれば,電界ベクトルの一部はそちらへも向かいます.これが多くなればクロストーク量も増えるので,低減策として図33のように線間にビア(Via)の壁を立てかけるアイデアがあります.


図33 線間にビアの壁を立てかける

 

 ビアを描く手順は,以下の通りです.まず[Ctrl]キーを押したまま[D]キーを押してGNDレベルに移動してから,基板に垂直に立ち上げるビアの台座となる金属く矩形を配線と同じ要領で描きます.次にToolboxの[Up One Level]ボタン(図34)をクリックしてから,その上の[Edge Via]ボタンをクリックし,ビアの台座の長手の縁をクリックします(図33の3次元表示ではクリックした片側の縁だけ見えるが,実際には1セル分の厚さで立ち上がっている.またviaの金属タイプは台座の金属に設定した材料値が使われる).


図34 Up One Levelボタンをクリックする

 

 図35はバックワード・クロストークを意味するS31の比較です.ビア付きの配線は最大約7dB低減できています.


図35 バックワード・クロストークS31の比較

 

 周波数によっては,柱状のビアを等間隔に配置して一定の効果が得られるので,ビアのバリエーションによる効果の違いを試してください.

注9: 導体の電流密度分布図は,複数の導体が接近している場合,それぞれの導体を流れる電流の大きさや方向,周波数によって影響されるが,これを近接効果(Proximity Effect)という.

 

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