無償ツールで設計効率の向上を体験 ―― 配線レイアウトの電磁界シミュレーションを体験する

小暮 裕明

[コラム] 電磁界シミュレータSonnetの仕組み

 電磁界シミュレーションの手法には,表Aに示すように,周波数領域の手法と時間領域の示す手法があります(1),(2).周波数領域の手法は,信号源に正弦波を加えて一つの周波数で電力分布やSパラメータなどを求めます.そのため広帯域のデータを得るために周波数ステップを細かくすると計算時間が増えます(SonnetのABSスイープは特別な補間法でこの問題を解決している).

表A 周波数領域の手法と時間領域の手法の例 

周波数領域(Frequency Domain)時間領域(Time Domain)
モーメント数(MoM)
境界要素法(BEM)
有限要素法(FEM)

伝送線路法(TLM)
有限積分技法(FIT)
有限差分時間領域法(FDTD)


 モーメント法は,マクスウェルの方程式から積分方程式を導出するところから始まります.これは積分方程式を離散かして行列演算で連立方程式を解く一般的な解法なので,電磁界問題以外の分野,例えば数理統計学などでも使われています.

 電磁界シミュレーションでは,図Aに示すように,多層基板の導体表面を細かく分けたそれぞれの要素(サブセクション)の表面電流を求めるためにモーメント法が使われています.


図A Sonnet(モーメント法)の解析空間
多層基板の導体表面を細かく分けた要素(セブセクション)の表面電流を求める.

 

 図AのJ(x', y')は微小な電流要素で,別のサブセクションを観測点としたときの電界Eは,次の式で表されます.

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (A)

 ここでG(x,y,x',y')はグリーン関数注Aのことで,二つの要素間の関係を表しています.式(A)を電流Jについて解くわけですが,ここでモーメント法の手法が使われます.

 図Aに示すように,導体表面をN個のサブセクションに分割します.未知の電流を既知のJ(x',y')を使って表しますが,Sonnetでは屋根の形をしたルーフ・トップ関数を使っています. 

 図Bのサブセクションiに置いた既知の電流によってサブセクションjの電界が得られます.サブセクションjの電圧は,電界を積分して,

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (B)

で得られます.

 図Bのように一つのサブセクションだけに既知の電流を置いて,ほかはゼロとし,すべてのサブセクションの電圧を求めます.これをすべてのサブセクションについて繰り返し,最後にこれらの電流をすべてのサブセクションに置いたとき,電圧の合計がゼロになる条件(境界条件)を使って,図Cのような回路全体の表面電流分布が決定されます.


図B サブセクションの電圧を求める図C 回路全体の表面電流分布が決定される

 

注A: グリーン関数は,ある点x'で生じた現象の効果を点xへ伝える役割をする関数G(x,x')で,英国の数学者George Green(1793~1841年)によって考案された.

 

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