放熱,事後対策の進め方 ―― 温度分布や空気の流れの正確な把握と各種対策部品の使いこなしが鍵
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熱対策部品の選択方法1-冷却ファン
自然空冷において,製品の冷却が難しい場合,ファンの採用を検討します.ファンを使ってはいるものの,冷却能力が不足しているような場合は,冷却ファンの見直しが必要です.
● 冷却ファンには大きく三つある
一般的な冷却ファンには,軸流ファン,遠心ファン,横流ファンがあります(図A)
軸流ファンは軸方向に風が流れ,大きな風量が得られます.装置全体の冷却といった用途に適しています.
遠心ファンは,羽根の半径方向に風が流れます.高密度に実装された機器あるいは局所的冷却といった高風圧が必要な用途に適しています.
横流ファンは軸方向に長い均一な風速の送風幅を持つことが可能なファンです.広範囲に温度を一定にする用途に適しており,エア・カーテンなどに使われています.
● PQ特性
電子機器において,用途として高い風圧が必要か,大きな風量が必要なのかを検討してファンを使い分けることになります(1)(2).そのときファンの風圧と風量を判断する基準となるのが,カタログに載っているPQ特性(静圧,風量特性)です.
PQ特性は一般的に(図B)のように表されます.これを利用すると,使用する機器のきょう体のシステム・インピーダンス(通風抵抗,つまり静圧)に対して,どれだけの風量が得られるかを導出できます.
使用する機器のきょう体のシステム・インピーダンス(通風抵抗,つまり静圧)に対して,どれだけの風量が得られるかを導出できる.
PQ特性の図において,風量がゼロの場合に静圧は最大になり,静圧がゼロの場合に風量が最大になっています.ファンを使用する機器のきょう体のシステム・インピーダンス曲線とPQ特性曲線の交点によって動作点が決定され,静圧と風量を予測できます.ただし,機器の通風抵抗を正確に測定するには,専用の測定装置が必要になります.イメージとしてはシステム・インピーダンスが比較的低い用途には軸流ファン,システム・インピーダンスが比較的高い用途には遠心ファンが使用されることが多いようです.
実際にファンを選定する場合は,例えば以下の経験式を使って,おおよその必要な風量を導き,許容寸法や騒音特性などを考慮して選定する方法があります(3).
W=1150QΔr
ただし,W:消費電力(W),Q:換気風量(m3/s),Δr:内部空気温度上昇(K)とする.
ここでは必ずマージンを考慮した選定が必要です.