放熱,事後対策の進め方 ―― 温度分布や空気の流れの正確な把握と各種対策部品の使いこなしが鍵

松居洋一,野村太一郎

tag: 実装 電子回路

技術解説 2007年8月28日

ステップ4 きょう体を含めた全体の放熱構造を見直す

 きょう体表面の温度が基準を満たしていない場合は,

・熱源(発熱部品)の温度を下げるといった根本的な対策
・発熱部品ときょう体との熱伝導経路の一部を断熱
・ヒートスプレッダにより熱を拡散
・再度,空気の流れを見直す

などの対策が考えられます.

 ただし,金属板などのヒートスプレッダを使っても,空気の流れが全くない場合には,時間が経過するにつれ金属板の温度が発熱部品温度に近づきます.きょう体表面温度の問題個所に対してヒートスプレッダを使用することと並行して,空気の流れを強化することが必要です.

 コストが許せば,グラファイト・シートの使用を検討するのも一つの方法です(5).グラファイト・シートは,平面方向へは金属板と同等あるいはそれ以上の熱伝導率を持ち,厚さ方向への熱伝導率が平面方向の数十分の1という性質を持ちます.

ステップ5 騒音は規定値を超えていないか

● 風量を増やせば騒音も増える

 強制空冷システムにおいては,熱と騒音は相互に関連しあっています.特にファンの騒音が問題になることが多くあります.電子機器から発生する騒音によりユーザが不快にならないよう,機器メーカによっては騒音の基準を設けて管理する場合があります.

 強制空冷システムの性能を向上させるためには,ファンの風量を増加させる,ファンの個数を増やすなどの方法が考えられます.しかし,ファンの冷却性能増強が騒音特性により制限されることが多々あります.

 騒音測定の方法については,例えば,情報機器に対しては国際規格ISO 7779などに記載があります.おおよその値が分かればよい場合には,簡易騒音計などを使って測定する方法もあります.

● 騒音特性の改善方法

 少々乱暴な言い方をすると,強制空冷システムでは,ファンの風量を増やすほど冷却性能は強化されます.ですが,通常の製品には騒音特
性の基準が定められていることが多く,たいていはこの騒音基準を満たすファンの風量が冷却性能を決定します.

 熱対策の一つとして製品の騒音特性を改善するには,ファン自体を改善する方法と,それ以外の部分を改善する方法が考えられます.ここではファン以外の部分を改善する事例を説明します.まず,きょう体における騒音対策ですが,

・きょう体の通風抵抗を減少させるためにケーブルを束ねて固定するなどして通風路の障害物をなくす,あるいは整流部品を使用する
・ファンと吸気口(排気口)との距離を遠ざけることで,空気の流れの乱れと通風抵抗を減少させる
・排気口周り(ダクト内側)に,スポンジなどの吸音効果のある材料を使用した吸音ダクトあるいは吸音フィルタを形成する
・ファン自体の振動がきょう体に伝わるのを防止するために,ファンの取り付けに防振材を使用する

などの方法があります.

 ヒートシンクについては,フィンの形状によって騒音特性が変わってきます.同じ騒音レベルにおける冷却性能を比較することにより,冷却性能改善と騒音特性のトレードオフを考慮してフィン形状を決定する必要があります.特に排気口付近にファンを設置する場合には,排気口付近で排気が逆流してファンの吸気と排気が混合してしまう場合があります.このような場合には排気と吸気を遮へい板により隔離することで,冷却性能だけでなく騒音特性も改善する場合があります.

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