放熱,事後対策の進め方 ―― 温度分布や空気の流れの正確な把握と各種対策部品の使いこなしが鍵

松居洋一,野村太一郎

tag: 実装 電子回路

技術解説 2007年8月28日

●○● Column ●○●
熱対策部品の選択方法2-ヒートシンク,ヒートパイプ

■ヒートシンクの選択

● 表面積が冷却性能を決める

 ヒートシンクは発熱部品を放熱し,熱を拡散するために使用します.このため,ヒートシンクの表面積と熱伝導率が冷却性能を決定します.また,冷却性能は,冷却風の風速に依存するため,強制空冷システムにおいてはヒートシンクの圧力損失が重要な要因となります.

 まずは,ヒートシンクの表面積を増やすために,フィンを工夫することが考えられます.フィン形状としては,プレート型フィン,ピン型フィン,格子フィン,コルゲート・フィンといったものが考えられています(図C).最近ではフィンピッチを狭めることで放熱面積を増やしたスタックフィン・ヒートシンクやクリンプフィン・ヒートシンク(写真A)という高性能ヒートシンクを使用することもあります.

zu0c_01.gif
図C フィン形状の例

ph0a_01.jpg
写真A(7) クリンプフィン・ヒートシンク

■ヒートパイプの選択

 最近,さまざまな機器において使用されるようになったヒートパイプは,使用状態にもよりますが,銅の数十~数百倍の熱伝導率を持ちます.熱伝導率の非常に高い伝導材と考えることができ,問題となっている熱を低温部に効率良く運ぶために使用しますが,注意すべき点もあります.

● 熱輸送能力を越えないように使う

 ヒートパイプの性能を引き出すためには,熱源の熱量がヒートパイプの熱輸送能力を越えないようにしなければなりません.ヒートパイプの熱輸送能力は,ヒートパイプのメーカから情報を入手できます.一般的にはヒートパイプの断面積が大きいものの方が,小さいものよりも熱輸送能力は高くなります(表A)

 さらに,ヒートパイプを使用する場合には実装上の理由でヒートパイプをつぶす,あるいは曲げて使用することも多くなります.この場合もヒートパイプの熱輸送能力は低下するので注意が必要です.熱輸送能力に見合った径のヒートパイプを使用するか,あるいはヒートパイプを複数,並列して使用することを検討します.

ヒートパイプ外径(mm) 最大熱輸送量
丸型(W) 平板型(W)
3 13 10
4 25 15
5 40 27
6 60 35
7 85 41
8 110 47
9.5 150 58
表A(9) ヒートパイプの性能の目安

● その他の注意事項

 ヒートパイプの能力を最大限に引き出すためには,受熱部と放熱部(ヒートパイプ両端)の温度差を十分に確保することが望まれます.また,ヒートパイプの内部構造によっては,受熱部を放熱部よりも高い位置に設計してしまうとヒートパイプの性能が十分に引き出されない場合があります.また,ヒートパイプの作動液として水を使っている場合には,低温で使用される場合の凍結に配慮する必要があります(4)
 最近では,平面型のフラット・ヒートパイプ,あるいはヒートパイプと原理は異なるものの平面型に熱を拡散する能力が非常に高いヒートレーンといった熱対策部品がありますから,使用目的と実装条件に合わせて選びます.

*     *     *

 熱測定や熱対策,熱シミュレーションを活用しての熱設計,熱解析では,一連の熱業務を支援するサービスを活用する方法もあります.

・熱設計:熱解析シミュレータを使用し,製品の設計開始時点から,熱問題に対する対策の織り込みを行う.
・熱解析:製品の設計初期から,熱処理の解析を行い,問題の有り無しを検討する.
・熱測定:試作段階の製品の精密な熱関連の測定を行う.同時に冷却ファンによる騒音などの問題がないかの測定を行う.
・熱対策:熱解析・測定解析結果に基づく対策の提案,製品への適用検証などを行う.

 筆者ら(日本アイ・ビー・エム)による熱解析業務支援サービスは,以下のWebページでご確認ください.
http://www.ibm.com/jp/design/service/mecha.html#no5

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