組み込みマイコンにおけるベンチマーク利用法の新しい動向 ―― 車載,産業機器,民生機器などの分野別ベンチマークを提供するEEMBC(エンバシー)
● 各個別のベンチマークの結果から推測すると...
・ネットワーキング・ベンチマーク
ネットワーキング・ベンチマークは,キャッシュのレイテンシと構成によって性能が左右されます.例えば512Kバイトのパケット・フロー・カーネルは,約31Kバイトのデータ・サイズをパケット・ヘッダとして繰り返し使います.従って,このベンチマークは32KバイトのアソシアティブL1キャッシュにほぼ完全にヒットします.
・テキスト処理のベンチマーク
テキスト処理のベンチマークは,strcmpおよびstrcpyのライブラリ関数を用います.この関数を最適化すると,テキスト処理ベンチマーク結果でよい値が得られます.このベンチマークで使われるデータの総容量は約42Kバイトです.
この場合,64KバイトのアソシエイティブL1キャッシュでほぼ完全にキャッシュがヒットします.L1キャッシュが64Kバイト未満だと,L2キャッシュのレイテンシがこのベンチマークの性能結果に大きく影響してきます.また,このベンチマークはパーシングに代表されるように制御処理がコード全体の20%を占めるため,分岐レイテンシによっても性能が大きく変化します.
・行列演算ベンチマーク
行列演算ベンチマークにおいては,ポピュラな演算アルゴリズムとしてLU分解と行列式が存在し,これらは62Kバイトのデータセットに対して演算操作が行われます.
ベンチマーク性能に影響する要因には,浮動小数点演算のレイテンシおよびキャッシュ・レイテンシがあります.プリンタでは浮動小数点演算はほとんど使われませんが,行列演算はレンダリング・アルゴリズムでよく用いられます.
・角度時間変換とPWMベンチマーク
角度時間変換およびPWMベンチマークは,モータ制御およびタイミング機能で用いられるものですが,ほとんどの場合,制御コードとコンパイラ効率の影響を受けます.このベンチマークは,簡単に16Kバイトの小さなキャッシュに入ります.