小さなCPUモジュールを利用した省スペースの組み込みコンピュータに注目 ―― 第12回組込みシステム開発技術展(ESEC)レポート

北村 俊之

tag: 組み込み 半導体

レポート 2009年5月18日

 組み込み技術についての総合展示会「組込みシステム開発技術展(ESEC)」が,2009年5月13日~15日の3日間,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された(写真1).本展示会は,組み込みシステム開発に必要なハードウェア,ソフトウェア,モジュールから開発環境までが一堂に集まる大規模な専門展示会で,今回で12回目を迎える.

 組み込みシステム開発技術展は,いくつかのサブ展示会やゾーンから構成されている.例えば,「組み込みボード・コンピュータEXPO」には,ボード・コンピュータやメモリ・ボード,ラック・ケース,拡張ボードなどのベンダが集まっている.このほか,従来からある「テスト・検証」,「モーション コントロール」,「組み込み画像処理」,「無線通信」,「タッチパネル・ディスプレイ」,「設計・開発サービス/コンサルティング」の各ゾーンに加えて,今回から新たに「音声認識・音声合成」,「組み込み技術者 教育サービス」,「電源システム」の3ゾーンが設けられた.主催はリード エグジビジョン ジャパン.


[写真1] 会場受付の様子

●手のひらサイズの組み込みコンピュータを展示

 デジタルロジック日本事務所は,外形寸法が165mm×110mm×27mm,重量が500gとコンパクトな組み込みコンピュータ「MICROSPACE MPC20」を展示した(写真2)

 本コンピュータには,3.5インチSBC(Single Board Computer)フォームファクタ(102mm×146mm)に準拠する同社のCPUボード「MSB800」が組み込まれている.CPUとして,500MHzで動作するAMD(Advanced Micro Devices)社の「Geode LX800」を搭載する.CompactFlash,LAN,USB,およびオプションの2.5インチ型ハード・ディスク装置からブートできる.

 機能拡張用にMiniPCIソケットを備えており,無線LANやフィールド・バスの機能を追加できる.無線LANとフィールド・バスの両方を利用する場合には,オプションの拡張ボード(MSMP104+)が必要になる.電源はDC12/24VおよびAC110/220Vの電源ユニットから直接供給する.


[写真2] デジタルロジック日本事務所の「MICROSPACE MPC20」

●COM Expressモジュール内蔵の組み込みコンピュータを参考展示

 PFUは,同社のCOM Express準拠CPUモジュール「AM100シリーズ」を搭載した組み込みコンピュータの参考展示を行った(写真3).CPUとして,Intel社の「Core 2 Duo」(デュアルコア)を内蔵する.外形寸法は178mm×185mm×50mm,重量は2.0kg.筐体については,温度や振動などの耐環境対策が施されている.製造試験装置や画像処理装置,監視装置,制御機器,医療機器,ディジタル・サイネージ(電子看板)などのアプリケーションに利用できる.

 インターフェースとして,ディジタル画像出力(DVI)やLAN,USB,シリアル・ポート,オーディオ・ポート,PCカード・スロットなどを備えている.


[写真3] 参考展示されたPFUの組み込みコンピュータ

●IP通信による遠隔制御を実現する基板モジュールを展示

 サンリツオートメイションは,遠隔操縦ロボット用制御基板として開発した「遠隔操作IPシステム(TPIP:Telepresence over IP system)」を展示した(写真4).IP(Internet Protocol)通信を採用しているので,インターネット網や無線LANなどのインフラをそのまま利用できる.

 画像の取り込みと圧縮を並行処理しており,無線LAN使用時の遅延時間を100ms以下に抑えた.VGAサイズの画像であれば,30フレーム/sの速度で伝送できる.画像補正機能を備えており,伝送遅延の影響を計算して,遅延が生じていない場合の予測画像を出力できるという.ビデオ圧縮方式はMotionJPEG.オプションとして,フレーム欠落時に滑らかな画像を再現するゆらぎ補正機能に対応する.インターフェースとして,サーボ出力,CAN,USB,オーディオ入出力,アナログ入力,ディジタル入出力,パルス(エンコーダ)入力,NTSC入出力,Ethernet,RS-232-Cなどを備えている.


[写真4] サンリツオートメイションの「遠隔操作IPシステム」

●モデル・ベース設計に対応したLinuxボードの開発キットが登場

 エー・アンド・デイは,同社のLinux搭載CPUボード「AD7011」の開発キット「AD7011-EVA」を展示した(写真5).AD7011は,CPUとしてARM11コアを内蔵するFreescale Semiconductor社の「i.MX31」を搭載する.外形寸法は70mm×70mm.付属のLinuxには,リアルタイム拡張(Xenomai)が施されている.

 本開発キットは,USB 2.0,Line入力,Line出力,Ethernet,UART,A-Dコンバータ,D-AコンバータなどのI/O機能を備えている.また,オプションとしてZigBeeモジュールを用意する.

 本開発キットには,Eclipse対応のソフトウェア開発環境とドライバ・ソフトウェアが付属する.Windowsパソコン上で制御プログラムの開発を行えるほか,MathWorks社の「MATLAB/Simulink」を利用したモデル・ベース設計にも対応する.MATLAB/Simulinkによる設計に利用できるS-Functionを多数用意した.本開発キットと組み合わせて利用できるGUI作成ソフトウェア「VirtualConsole」も用意する.


[写真5] エー・アンド・デイの「AD7011-EVA」

●Linux,Windows Embedded CE,TOPPERS/JSPに対応した教育用ボードを展示

 トライポッドワークスは,組み込みソフトウェア教育用の開発ボード「TriBOARD EVA9」を展示した(写真6).本ボードは,OSとしてLinux 2.6とWindows Embedded CE 6.0に対応する.TOPPERS/JSPカーネルのサポートも予定している.実際の製品に組み込まれているさまざまな周辺インターフェースを備えているため,実践的な教育に利用できるという.例えば,ターゲットとなるシステムの検証環境の構築やOSの移植などを行える.

 ソフトウェアについては,ブート・ローダやデバイス・ドライバを含むBoard Support Package(BSP),および各種サンプル・コードなどが付属する.


[写真6] トライポッドワークスの「TriBOARD EVA9」

●表面実装部品をピンセットでつまんでLCR測定

 ニューリー・土山のブースでは,カナダのSiborg Systems社が開発したピンセット型LCRチェッカ「SMART TWEEZERS」が展示されていた(写真7).本チェッカは,表面実装部品(SMD)の定数測定や評価,選別,および実装済み部品のインピーダンス測定用に開発された.プローブには金メッキが施されている.

 測定対象となる表面実装部品は0201以上に対応.実装済み部品のインピーダンス測定は疑似4端子法で行われ,電圧と電流を測定してインピーダンスが求めている.電源にはアルカリ乾電池(耐久70時間)または亜鉛電池(同200時間)を使用.


[写真7] Siborg Systems社の「SMART TWEEZERS」

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