組み込みマイコンにおけるベンチマーク利用法の新しい動向 ―― 車載,産業機器,民生機器などの分野別ベンチマークを提供するEEMBC(エンバシー)
● 用意されている八つのベンチマーク・スイート
具体的にどのようなベンチマーク・スイーツがEEMBCから提供されているかについて説明します.現在,六つの分科会から八つのベンチマーク・スイーツが発表されています.これらのベンチマーク・スイーツは,会員でなくてもソース・コード・ライセンスをEEMBCと締結することで有償にて入手が可能です.この場合,システム設計者は,選定対象のプロセッサを搭載した評価ボード上でコンパイルしたベンチマーク・ソフトウェアを実行することにより,プロセッサ・ベンダとは独立した,中立的でかつ自社用途に即した性能検証が可能となります.
ソース・コードが有償である理由は,プロセッサ・ベンダ向けのスコア認定作業,ソース・コードの維持管理,技術サポート,および分科会の管理などにかなりの工数が発生するからです.ライセンス料は,こうした信憑性の高いベンチマーク・スコアを累積していくために必要不可欠な費用だと考えられます.表3に具体的なベンチマーク・スイーツの種類を示します.
車載・産業機器,民生機器,Java,ネットワーキング,OA機器,通信機器の各分科会がありますが,民生機器の分科会はディジタル・エンターテイメントのベンチマーク・スイーツDENBenchも策定しています.実際のシステム設計でプロセッサ・メモリ・サブシステムの性能評価をする場合,かならずしも一つのベンチマーク・スイーツですべての性能が網羅されるわけではなく,複数のベンチマーク・スイーツにまたがる場合があります.以下に示すプリンタにおける応用事例を利用して,実際のEEMBCベンチマークの使い方を説明します.