つながるワイヤレス通信機器の開発手法(7) ――続・原理設計を行う 通話の原理から通信を学ぶ
●ディジタル通信の音声処理技術
上記の技術はアナログ通信に用いられる技術であるが,ディジタル通信の場合も音声の品質を良くするために以下に示す二つの技術が用いられている.
1)音声転送に適したエラー制御
ディジタル通信の場合,アナログである音声信号を一度ディジタル信号に変換(符号化)して送信するため,通信路におけるノイズはディジタル符号に対するエラーとなる.このため,音声の品質を上げるためにエラー制御が有効である.音声通信のエラー制御は単なるエラー制御ではなく,音声の特性に合った方法で行われる.
アナログ信号を符号化したあと,データ列をクラス1とクラス2に分ける.クラス1のデータが誤っている場合,音声の品質に重大な劣化をもたらす.クラス2は誤ったとしても軽微な劣化ですむデータである.このような分割のあと,クラス1の部分のみエラー制御を行う(図4).クラス2の部分にもエラー制御を施してもよいが,その場合は高速なデータ転送速度が必要となり,周波数の有効利用にならない.
音声の特性に合わせたこの方法により,データ転送速度を上げずに,かつ,音声劣化が比較的少ない方法で音声を転送できる.
〔図4〕音声転送に適したエラー訂正
符号化後,そのデータ列をクラス1とクラス2に分ける.それから,クラス1の部分のみエラー制御を行う.クラス2の部分のエラー制御を行うと,高速なデータ転送速度が必要となり,周波数の有効利用にならない.