つながるワイヤレス通信機器の開発手法(7) ――続・原理設計を行う  通話の原理から通信を学ぶ

太田博之

tag: 組み込み

技術解説 2003年8月28日

1.音質改善のための音声処理技術

 まず,アナログ通信とディジタル通信の音声処理技術について述べる.

●アナログ通信の音声処理技術

 アナログ通信の場合,音声処理技術には音声の圧縮・伸張によってノイズを抑圧するコンプレッサ(圧縮)/エキスパンダ(伸張),ノイズのピーク・レベルを抑えるノイズ・リミッタといった技術がある.

 コンプレッサ/エキスパンダの概念は図2のように表される.コンプレッサによって,送信側においてあらかじめlogで1/2(例えば,10dBから5dB)に圧縮して音声信号を送信する.この圧縮された音声信号に通信路でノイズが乗り受信機に到達するわけだが,受信側では音声信号をlogで2倍(5dBから10dB)の伸張を行って送信側と同じレベルに戻す.このとき,ノイズについても同じ処理を行う.このような処理を行うと,通信路で例えば2dBだったS/N(信号対ノイズ比)が送信側では4dBになるため,ノイズが少なく品質の良い通信を行えることになる.

 コンプレッサ/エキスパンダは,アナログFM通信で多く用いられ,その効果を発揮した.また,この技術はアナログ回路で実現されている.具体的には,ダイオードの電圧特性のカーブを利用して圧縮伸張を行っている.

 また,AM変調を使った通信において通信路でノイズがのった場合,図3(b)のように大きなピーク電圧が発生する.このノイズはそのまま音声信号の振幅に比例するので,非常に大きなノイズとなって人の耳に聞こえてくる.これに対して,図3(c)のように任意の振幅以上をカットする方法をノイズ・リミッタという.このような振幅に比例するノイズはAM変調のときしか生じないため,この技術はAM変調を用いた通信でのみ使用される.この技術は,リミッタ電圧を決定するバイアス電圧をダイオードにかけて実現する.

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〔図2〕コンプレッサとエキスパンダ
受信側では,音声データだけでなく,通信路で3dBだったノイズを6dB(つまりlogで2倍)に伸張している.

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〔図3〕 ノイズ・リミッタ
この技術はAM変調を用いた通信でのみ使用される.

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