つながるワイヤレス通信機器の開発手法(1) ――仕様を理解する
●仕様の最終チェックとなる認証テスト
仕様に沿って機器が開発された場合,その機器が仕様に準拠しているかどうか(コンパチビリティ)を測る方法が必要になる.コンパチビリティを保つ必要があることは通信機器に限った話ではない.
例えばBluetoothでは,Bluetooth SIGがロゴ認証のしくみやロゴ認証に必要なテスト項目を詳細に規定しており,機器メーカは認証を取得することによってユーザに対して製品の一定の品質を証明することができる.図5にBluetoothのロゴ認証のしくみを示す.図5において,ロゴを受けようとするメーカは一部のテスト(図中ではカテゴリAテスト)をBQTF(Bluetooth Qualification Test Facility)で行う.また,そのほかのテスト(図中ではカテゴリB,Cテスト)をメーカみずからが行う.BQTFでのテスト結果とメーカが行ったテスト結果を「テスト・レポート」としてBQB(Bluetooth Qualification Body)に提出する.BQBが承認しロゴ認証を受けると,Bluetooth SIG公式Webサイトの"Qualified Products List"に掲載されるしくみになっている.
[図5] Bluetoothのロゴ認証のしくみ
ロゴ認証を受けようとするメーカは,一部のテスト(図中ではカテゴリAテスト)をBQTF(Bluetooth Qualification Test Facility)で行い,そのほかのテスト(図中ではカテゴリB,Cテスト)をメーカみずからが行う.そして,BQTFでのテスト結果とメーカが行ったテスト結果を「テスト・レポート」としてBQB(Bluetooth Qualification Body)へ提出する.BQBが承認しロゴ認証を受け,Qualified Products Listに掲載される.BQA(Bluetooth Qualificatoin Administrator)は判定の受付窓口.
このしくみの詳細説明と認証に必要な書類,テスト方法はBluetooth SIG公式Webサイトからユーザがダウンロードできるしくみになっている.ただし,この場合,ユーザはBluetooth SIGに加盟する必要がある.
ワイヤレスLANの場合も同じようなしくみを用意している.ワイヤレスLANの場合,この認証を行う機関はWECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)と呼ばれている.認証テストに合格すると,WiFi(wireless fidelity;「ワイファイ」と読む)というロゴ・マークを与えられる.
BluetoothとWECAの認証テストの内容を比べると,Bluetoothは計測器による客観テストが多く含まれ,相互接続性を客観的に評価,保持していくしくみが見受けられる.
これに対してワイヤレスLANでは,テストの大半がWECAが指定する既存の機器に接続できるかどうかを確認するだけにとどまっている.
この二つの違いは,先に説明したDe jure Standard(Bluetooth)とDe facto Standard(ワイヤレスLAN)の違いに起因している.
参考・引用*文献
(1) WECAのホームページ http://www.wirelessethernet.com/
おおた・ひろゆき
加賀電子(株)
◆筆者プロフィール◆
太田博之.20年近くにわたりGPS,携帯電話,ワイヤレスLAN,Bluetooth用システムおよびシステムLSI開発を経験.現在はBluetooth開発アライアンスhimicoプロジェクト(http://www.himico.com/)にコーディネータとして参加.システムLSI開発から次のフェーズへのステップアップを模索中.趣味は,あまたある標準通信規格をだれよりも早く理解すること.