高速化が図られ用途も広がるシリアル・インターフェースの世界
1.何が実現される?それはいつ?
USB 2.0では,データの最大転送速度が12Mbps(USB 1.1)から480Mbpsへと引き上げられた.オーバヘッドがあるので,実際に得られるデータ転送速度はUSB 1.1の場合,9.2Mbpsである.バージョン2.0の実際の性能がどの程度となるかは,予測がむずかしい.実際のハードウェアとOSの組み合わせが決まらない限り,すべては机上の数字にすぎない.
USB 2.0は,今後2~3年間のうちに勢力を拡大することになるであろう.ただ,出荷される周辺機器の大半は,引き続きバージョン1.1仕様に固執するものと思われる.また,バージョン2.0のサポートを予定している半導体メーカの大半も,すべてバージョン1.1との互換性を確保したうえで製品化するであろう.
米国Lucent Technologies(以下,Lucent)社のstandard products managerであるDan Devine氏は,「当社のスタンダード製品は,約3年間は製造が継続される.だから,あるデバイスを販売する場合,制約の多い条件に合わせて段階的に製品化するよりも,2002~2003年の本格生産を見越して,最初からすべての制約条件を満たした製品の出荷を目ざしている」と述べている.
●USB2.0対応LSI
USB 2.0ベースの製品(LSI)は,2000年末か2001年初めにその姿が明らかになるだろう.これらの多くは,まずFPGAで試作品が開発される.実際に製品として発売されるのは2001年春頃になるであろう.この頃には,OSによるサポートも実現することになろう.
Lucent社は最近,USB 2.0仕様の発表に合わせて,シングル・チップのトランシーバUSS2X1を発売した.予想どおり,このチップではバージョン1.1との互換性が維持された.このチップは,送信方向(周辺機器からホストへ)ではパラレルからシリアルにデータ変換を行う.受信方向では,シリアルからパラレルへの変換を行う.
同社のベル研究所が開発したチップは,2チップによる完全なUSB活用を実現するために,ASICまたはFPGAと併用することもできる.0.25μmのCMOSプロセス技術を採用した結果,低消費電力を実現できた.
Lucent社は,ホスト・コントローラとしてUSS-2000システム・チップを発売している.これはUSB 2.0 EHCIホストと,関連トランシーバの付いたUSB 1.1ホスト4台,PCIインターフェース・モジュール,パイプライン・キャッシュ・コントロール・モジュール,リスト・プロセッサ・モジュール,送受信制御ロジック,シリアル・インターフェース・エンジン,PCI電源管理モジュール,メモリ・バッファ,PCIバス・アービタを搭載している.
米国Innovative Semiconductors社が発売しているトランシーバ・マクロセルSL200USB2.0は,米国Synopsys社のDesignWareに含まれる合成可能なUSB 2.0コア(図1)を補完するもので,ミックスト・シグナルのマクロセルとなっている.このマクロセルは,カメラや記憶装置,プリンタ,スキャナ,ビデオ・レコーダ,インターネット機器などの画像処理や動画関連のアプリケーションに適している.
〔図1〕Innovative Semiconductors社のSL200
SL200は,ミックスト・シグナルのIPコアである.これは,単体のIC,あるいは汎用のシリアル・インターフェース回路や特定用途向け回路と統合可能なIPコアの形態で出荷される.または,同社のシリアル・インターフェース・コアであるSL250の一部(サブモジュール)として提供される.