宇宙帆船「IKAROS(イカロス)」のシステム開発(前編) ―― ソーラー電力セイル・プロジェクト,世界初の技術に挑戦

船瀬 龍

tag: 組み込み

技術解説 2010年9月16日

 2010年6月,地球に帰還し,小惑星「イトカワ」の欠片の入った可能性のあるカプセルを無事地球に送り届けることに成功した,小惑星探査機「はやぶさ」(図1).大気圏に突入して自らの機体は燃え尽きながらカプセルを届けた「彼」の姿に感動した方も多いのではないかと思います.

図1 小惑星探査機「はやぶさ」(画像提供:宇宙航空研究開発機構)

 はやぶさの成果は,単に小惑星のサンプルを持ち帰ってきたことだけではありません.将来,日本の惑星探査機が自在に太陽系を航行するための重要な技術である「惑星間往復飛行技術」を実証したことが,その最大の成果です.従来の化学推進エンジンではなく,燃費の良い電気推進エンジン(イオン・エンジン)を駆動することによって,少量の燃料で目的の惑星まで行って帰ってこれるようになったのです.

 ところで,はやぶさが,地球帰還をもって惑星間往復飛行技術の実証を完了しようとしているまさにそのとき,将来の惑星探査のために重要なもう一つの技術が,日本の探査機によって実現されようとしていました.その探査機こそが,今回紹介する「IKAROS(イカロス)」です.

●ソーラーセイルは太陽光の圧力で進む

 金星探査機「あかつき」と同時に打ち上げられた小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(Interplanetary Kite-Craft Accelerated by Radiation of the Sun,イカロスと発音)」は,その名の示す通り,「太陽光の圧力で推進し,惑星間を航行する宇宙帆船(宇宙ヨット,ソーラーセイル)」の技術実証機です(図2).宇宙帆船(ソーラーセイル)とは,宇宙空間で大面積の帆(セイル)を展開し,太陽からの光の圧力を利用して宇宙空間を推進する宇宙船のことです.

図2 IKAROSの軌道上のイメージ

 地球上でヨットや帆船と言えば,風(空気の流れ)の圧力を受けて進むものです.自動車などと違って,自然現象を利用して推進するため,風がある限り燃料を使わずにどこまでも航海することができるのが特徴です.同じような原理で燃料を使わずに宇宙空間を進む宇宙帆船のアイデアは,やはり100年以上前から提唱されていて,SF小説の題材にもなっていました(代表的なものとしては,アーサー・C・クラークの『太陽からの風』がある).ただし,地球上と違って宇宙空間は真空であり,風などは吹きません.宇宙帆船が宇宙空間で推進力として利用するのは,風ではなく,太陽光の持つ圧力です.

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