宇宙帆船「IKAROS(イカロス)」のシステム開発(前編) ―― ソーラー電力セイル・プロジェクト,世界初の技術に挑戦

船瀬 龍

tag: 組み込み

技術解説 2010年9月16日

●IKAROSの航跡

 さて,ここで,IKAROSのこれまでの航跡について紹介します.図5にIKAROSのセイル展開シーケンスの概略図を示します.こちらを参照しながら読んでいただければと思います.

図5 IKAROSのセイル展開シーケンス

5月21日 打ち上げ
この後数日間,機器のチェックアウト(打ち上げ後の簡単な機能・性能確認)を実施しました.

打ち上げから約1週間後:先端マス分離を実施
セイル展開の初めの一歩である先端マス分離を実施しました.先端マスとは,セイルの四隅についているおもりのことで,IKAROS全体がスピンする遠心力によってセイルを展開,展張するために使います.先端マスは打ち上げ前にはIKAROS本体に固定されていて,それを分離しないとセイルの展開ができないので,失敗が許されない大事なオペレーションです.

 その後,スピンの遠心力によって,巻き付けたセイルを徐々に繰り出していく1次展開も,モニタ用カメラの画像で展開状況を随時確認しながら,ゆっくりと慎重に進めていきました.

6月9日(打ち上げから約3週間後):2次展開を実施
セイルを保持している回転ガイドを解放し,2次展開を実施しました.その日のオペレーションは,展開関係の機器類の開発責任者である筆者が担当したのですが,日本時間18時36分00秒,「展開実行」のコマンド送信を指示するときには,緊張のあまり声も足も震えていました.何年間もの間,プロジェクト・メンバが昼夜問わず開発に没頭してきたことは,すべてこの瞬間のためです.電波が地球とIKAROSを往復する1分弱が,気の遠くなるほど長く感じられます.IKAROS本体のスピン・レート(回転速度)を示すテレメトリ(探査機から地上へ送られる各種データ)の値が事前の予測通りガクッと大きく変動します.緊張の一瞬です.しばらくしてからスピン・レートが予定通り安定し,どうやら展開が成功したらしいと分かった瞬間,管制室が拍手に包まれました.世界初のソーラーセイルの誕生です.

 IKAROSはその後,展開したセイルによって所定の推進力を発生していることが確認され,太陽光圧によって推進力を得ることを見事に実証しました.ミッションのほとんどを成功裏に達成し,2010年8月現在,セイルの姿勢(太陽に対する向き)を変化させ,目標の軌道へ投入する軌道制御の実験を実施しているところです.

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