OPアンプとは何か ―― その働きと役目を知る
●仮想GNDジェネレータと反転増幅回路
OPアンプ回路の基本中の基本と言われるのが,反転増幅回路です.この回路では,OPアンプはいったい何をしているのでしょうか.
反転増幅回路では,OPアンプの非反転入力IN+が接地され,反転入力IN-に出力を負帰還しています.すなわち,OPアンプはIN+=0Vを入力電圧として与えられ,それにIN-を一致させています.その結果として,常にIN-=0Vが保たれています.これは仮想接地と呼ばれますが,単に現象としてそう見えるのではなく,OPアンプがひたすら作り続けているものです.
このように,反転増幅回路でのOPアンプの働きはIN-を0Vに保つことです.そこで,これを仮想GNDジェネレータと呼ぶことにします(図7).
仮想GNDジェネレータは,IN+を接地に使っているので,制御電圧を入力できません.すなわち,電圧フォロワや非反転増幅回路のような電圧制御電圧源としては使えません.
また,OPアンプの入力ピンIN+,IN-は,どちらも理想的には入力インピーダンスが無限大で,電流が全く流れません.そのため,抵抗R2を流れる電流は常にI=0で,OPアンプの出力OUTも常に0Vとなります.このままでは,直接何かの役に立つという回路ではありません.
この仮想GNDジェネレータは,制御電流を流し込むことによって,出力電圧を作り出すことができます(図8).
反転入力IN-は0Vに保たれているので,電圧をかけることはできませんが,電流を流し込む(または流し出す)ことは可能です.ここに電流入力ピンを付けて入力電流Iinを流すと,Iinはすべて抵抗R2を通って流れ,抵抗R2で電圧降下Iin×R2を生じます.出力OUTは,
OUT=IN--Iin×R2
=-Iin×Rs
となり,入力電流Iinに比例した出力電圧OUTが得られます.
この回路は,入力電流を出力電圧に変換する電流-電圧変換回路です.また,入力電流で出力電圧を制御することから,電流制御電圧源と呼ぶこともできます.
さて,反転増幅回路は,この電流制御電圧源の前段に,電圧-電流変換回路を付加したものと見なせます(図9).
IN-は仮想GNDで0Vに保たれています.ここに抵抗R1を接続して入力電圧Vinをかければ,Vinに比例しR1に反比例する入力電流Iin=Vin/R1が発生します.このIinが抵抗R2を流れて電流-電圧変換されるので,
OUT=-Iin×R2
=-(Vin/R1)×R2
=-(R2/R1)×Vin
となります.
このように,反転増幅回路とは,電圧-電流変換,仮想GND,電流-電圧変換という三つの組み合わせで動作していることが分かります.そして,最終的な出力電圧として入力電圧の-(R2/R1)倍が得られることから,これを電圧増幅回路と見なしているわけです.
みやざき・ひとし
宮崎技術研究所