マイクロマシンやMEMSの研究開発に使われる防振装置や各種測定器が一堂に ―― 第20回マイクロマシン/MEMS展 レポート

北村 俊之

tag: 半導体 電子回路

レポート 2009年8月 5日

 財団法人マイクロマシンセンターは,2009年7月29日~31日の3日間,東京ビッグサイトにてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やナノテク,超精密・微細加工,バイオなどに関する国際展示会「第20回マイクロマシン / MEMS展」を開催した(写真1).今回で20回目を迎える本展示会には,9カ国から約252の企業や団体(国内:193社,海外:25社,国公立研究機関・学術機関:34団体)が出展した.


[写真1] 会場受付の様子
  

 

 マイクロマシンセンターによると,製造業界の落ち込みが続く中でも,MEMS産業は将来性の高い成長産業と言われているという.また,引き続き需要の見込まれる自動車,サービス・ロボット向けの各種センサやMEMS発振器に加えて,今後は医療,エネルギ分野,携帯電話や携帯型電子機器などにおいて,さらなる市場拡大が期待されている.

 MEMSとは,シリコン基板やガラス基板,有機材料などの上にセンサやアクチュエータといった機構系の要素と電子回路の要素を集積したデバイスを指す.MEMSは学術機関や半導体メーカ,電子部品メーカなどで研究開発が進められてきた.最近では航空機や民生機器など,多様な分野で年間数十億個のデバイスが使用されている.

● 5Hz以下の低周波領域に対応するアクティブ型防振台を製品化

 ヘルツは,測定環境などの最適化のための振動対策として,5Hz以下の低周波領域まで対応できる卓上型のアクティブ型防振台(振動制御装置)「TSシリーズ」を展示した(写真2).アクティブ型の防振技術では,電子制御を使用し,検出センサから得られた振動情報に逆向きの力を加えることで振動を抑える.本装置は薄型の卓上式となっており,使用目的に応じてデスク型架台に組み込んだり,測定器や加工機器に組み入れて使用できる.本装置に機器を載せたときの初めの水平出し(水平調整)は自動的に行われるため,偏荷重のある機器でも水平を保った状態で使用できる.また,本装置のコントロール・パネルの表示部分をタッチすると,システム全体が自動的にロック状態になる.前面のメニュー・ディスプレイでは,垂直と水平のXY方向の防振状態を確認できる.さらに,本体背面のBNCコネクタをオシロスコープに接続して,加速度計の信号を観察できる.0.7Hz~100Hzの周波数範囲で,垂直と水平の2方向およびそれぞれの回転方向において,アクティブに振動制御を行う.


[写真2] ヘルツの「TS-300」
 

 

● 最高速度10m/sのレーザ・ドップラ振動計を展示

 ポリテックジャパンは,小型のレーザ・ドップラ振動計「NLV-2500」を展示した(写真3).本振動計は,振動計コントローラにセンサ・ユニットを搭載し,レーザ出力を光ファイバ・ケーブルでセンサ・ヘッドに供給する.振動コントローラは,電気信号処理,電源,およびレーザ干渉計を搭載する.最大周波数は3.2MHz,最高速度は10m/s.スポット径が最小1.5μmのレーザと測定ターゲットを映し出すCCDカメラを備えており,データ・ストレージやインクジェット・プリンタ,超音波アクチュエータ,MEMSなどに組み込まれる極小部品の計測に利用できる.コンパクト・センサ・ヘッドは,マニュアル・フォーカス対応のレンズ(200mm~無限大)とコントローラに接続する光ファイバ・ケーブル(3m)で構成されている.


[写真3] ポリテックジャパンの「NLV-2500」 

 

● 非接触式3Dレーザ顕微鏡で接触式と同じ操作性を実現

 オリンパスは,3D測定レーザ顕微鏡「LEXT OLS4000」を展示した(写真4).本レーザ顕微鏡は,既存の接触式表面粗さ測定器と同じ操作性や互換性を備えている.粗さ専用モードでは,自動ライン・ステッチングにより最大100mmの長寸法線の粗さを測定できる.また,高いNA(開口数)を有する専用の対物レンズと405nmレーザに合わせて光学系が設計されており,これまで測定することが難しいとされていた急峻な角度を持つサンプルでも測定できるという.コンフォーカル光学系を2系統搭載し,反射率の異なる素材を含むサンプルに対して鮮明な画像を得ることができる.段差,表面の粗さ,面積・体積,エッジ自動検出など,七つの測定モードに対応している.


[写真4] オリンパスの「LEXT OLS4000」
 

 

● 微小な物体の温度を測定して高精細な熱画像を撮影

 アピステは,ディジタル・サーモ顕微鏡「FSV-GX7000」を展示した(写真5).ディジタル・サーモ顕微鏡とは,ミクロン単位(μm級)の微小な大きさの物体の温度を測定し,高精細な熱画像撮影を実行するために専用設計された顕微鏡である.16~80倍のズームが可能で,ICや半導体デバイスの評価試験や不良個所の特定,チップ・コンデンサやチップLEDなどの電子部品の温度測定,発熱不良解析,ソーラ・パネルや液晶パネルの不良セルの故障解析など,ミクロの温度変化を高倍率で測定できる.

 F値は1.6となっており,少ない赤外線受光量を逃すことなく集光できる.使用するゲルマニウム・レンズの材質や表面コーティングの品質を高めることにより,鏡筒内部からの熱雑音を低減した.精密内面加工された鏡筒内には,ゲルマニウム・レンズが最大11枚入っている.内部の第2群レンズと第3群レンズを連動して動かす「ツインモーションズーム機構」を採用しており,焦点を移動せずに焦点補正を行える.このほか,球面収差の最適化により,高分解能と安定したロング・ストロークを実現しているという.


[写真5] アピステの「FSV-GX7000」 

 

● インクジェット・プリンタのピエゾ方式ヘッドをMEMS技術で開発

 富士フィルム アドバンスト マーキング事業部は,研究開発などの用途に適したマテリアル・プリンタ「DMP-2831」を展示した(写真6).本プリンタは,ユーザが開発した多様な液体を,任意の対象基材の希望する位置に必要な量だけ,高精度で吐出できる.MEMS技術を利用して独自のピエゾ方式ヘッドを開発した.このプリント・ヘッドはカートリッジ型で,ユーザは任意の液体を専用カートリッジに充填して使用する.カートリッジ内に充填する液体容量は1.5mlと少量なので,高価な液体を使用した際の浪費を避けられるという.


[写真6] 富士フィルムの「DMP-2831」


 

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