OPアンプとは何か ―― その働きと役目を知る

宮崎 仁

tag: 半導体 電子回路

技術解説 2010年5月14日

●目的は誤差を0にすること

 それでは,OPアンプ本来の目的とは何でしょうか.この答えも簡単で,二つの電圧をぴったり一致させること,すなわち誤差を0にすることです.ただし,これを実現するのはOPアンプの働きではなく,負帰還(フィードバック制御)の働きです.

 フィードバック制御とは,出力値を与えられた目標値と一致させる自動制御です(図2).OPアンプは,フィードバック制御システムの中で,出力値と目標値の差(すなわち誤差)を検出して,思い切り大きく増幅する働きを担っています.この働きはエラー・アンプと呼ばれます.

図2 フィードバック制御
OPアンプはフィードバック制御のシステムの中で,エラー・アンプとして働く.

 

 電子回路における負帰還は,増幅器の利得の一部を入力側にフィードバックすることで,出力歪みを若干改善する技術として始まりました.しかし,OPアンプの負帰還はそれとは全く別物です.OPアンプは無限大の増幅率のほぼすべてを負帰還のために使いきります.

 OPアンプは「増幅器」ですが,与えられた電圧を何倍に増幅する,という増幅器ではありません.OPアンプを用いて,例えば2倍の増幅回路を作れますが,OPアンプの増幅率を「下げて」使っているわけではありません.OPアンプはいつでも目いっぱいの増幅をしています.

 OPアンプは目標値と出力値を比較する比較器であり,わずかな電圧差も見逃さずに検出する検出器であり,負帰還をかければ誤差を0に抑え込む制御装置になります.増幅率が有限だと誤差を検出する能力も有限となり,負帰還をかけても誤差を完全に0にはできません.

 とは言っても,現実のOPアンプICはこのほかにもさまざまな誤差要因を持っています.そのため,負帰還の誤差が完全に0でなくても,他の誤差要因と同程度かそれ以下にできれば実用上問題ありません.OPアンプICの増幅率(開ループ・ゲイン)は,そのように選ばれています.

 

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