つながるワイヤレス通信機器の開発手法(15) ――プロトタイプを開発する

太田博之

tag: 組み込み

技術解説 2005年1月11日

 これまで,ワイヤレス通信機器を機能ごとに分割し,それぞれのアーキテクチャやハードウェア,ファームウェアの設計手法について説明してきた.次に必要なことは,机上で設計した回路または機器がほんとうに動くかどうかの検証である.今回は,設計した機器のデバッグや動作検証に必要なプロトタイプの開発について説明する.  (著者)

 シミュレータなどを利用し,机上で設計した機器や回路,ソフトウェアを実際に動作させて,その妥当性を確認する必要がある.そのために,最終製品に近い回路(いわゆるプロトタイプ)を作り,ハードウェアやソフトウェアを動作させて,その機能や性能を検証しなければならない.

 机上で設計してデバッグが終了したばかりのハードウェアやソフトウェアは,プロトタイプ上で動かしても正常に動作するとは考えにくい.正常に動作する最終製品を作り出すためには,

1)正常に動作しないときにその原因を洗い出す
2)不ぐあいの修正を反映させる

という二つの機能をプロトタイプ上で容易に実現できなくてはならない.このため,プロトタイプには次のような機能を盛り込む必要がある.

1)の実現――可観測性,可制御性
2)の実現――回路情報やプログラムのダウンロード機能

 可観測性と可制御性は,デバッグを行う際に重要な項目となる.正常に動作しないとき,すなわち不ぐあいが生じた場合に,その不ぐあいが生じた回路の周辺(またはプログラムの周辺)の動作をできるかぎり詳細に観測できれば,不ぐあいの原因をスムーズに特定できる.このような回路動作の観測のしやすさを「可観測性」と呼ぶ.

 また,正常に動作しない場合,不ぐあいの発生するパ ターンや状態を再現できるとその原因を特定しやすい.このように不ぐあいが生じるパターンや状態の再現のしやすさを「可制御性」と呼ぶ.可観測性,可制御性の具体的な実現方法は,後ほど実例を挙げながら説明する.

 プロトタイプでは,正常な動作を実現するためにプログラムだけでなく,FPGAなどを使用してハードウェア機能も変更する場合がある.机上設計やシミュレーションなどが終了した回路やプログラムが正常に動作しない場合,不ぐあい箇所を特定し,修正した回路情報やプログラムをパソコン(またはワークステーション)からデバッグ用ボードにダウンロードする.以前はEPROM(erasable program-mable read only memory)などをROMライタで書き換えてソケットに挿すといった方法をとっていたが,現在はパソコンなどからプロトタイプに直接ダウンロードする場合が多い.

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