組み込みプロセッサの最新動向 ――ヘテロジニアスなマルチプロセッサ構成が主流に
●お互いに「しゃべり始めた」小規模組み込み機器
最後に,組み込み分野でも処理性能が比較的低いプロセッサ技術の変化について触れたいと思います.技術的には停滞しているイメージのある,8ビットを中心としたローエンドのマイクロコントローラにも新たな胎動が起きているように思われます.そのトリガとなっているのが,RF(radio frequency;無線周波数)技術の応用の急速な広がりです.携帯電話やワイヤレスLANなどの通信機器だけでなく,一つ一つの物品,紙製のチケットにまでも通信機能が付与されることにより,それを制御するコントローラへの要求が多様化してきています.
思いもよらないものが通信機能を持ち,お互いに「しゃべり始めた」ために,これまでは想像すらできなかったアプリケーションが登場しつつあります(図7).これらの物品にインテリジェンスを与えるのが,ローエンドのマイクロコントローラとそのファームウェアです.この分野におけるキーワードは,少ピン,不揮発性メモリ,アナログ,といったところでしょうか.目立たない分野ですが,気がついたときには生活の隅々にしっかりと根を下ろしていることでしょう.また,マイクロコントローラを大量消費するいちばんの市場である車載電子機器でも,ワイヤに代わって,無線がそこここに使われつつあるようです.この分野からも新たなトレンドが登場するかもしれません.
〔図7〕思いもよらないものが通信機能を持ち始めた
◆筆者プロフィール◆
M.P.I(ペンネーム).若いころ,米国系の半導体会社で8ビット,16ビットのプロセッサ設計に従事.ベンチャ企業に移って,コードはコンパチ,ハードは独自の32ビット互換プロセッサのアーキテクトに.米国,台湾の手先にもなったが,このごろは日本の半導体会社でRISCプロセッサ担当の中間管理職のオヤジ.