組み込みプロセッサの最新動向 ――ヘテロジニアスなマルチプロセッサ構成が主流に
●汎用プロセッサの時代は終わった
今でも汎用プロセッサは存在していますが,いわゆる「組み込み」の世界では単体のLSI形態で利用されることは少なく,IPコア(プロセッサ・コア)としてシステムLSIに集積する形態の利用が中心です.
代表的な汎用プロセッサ・コアとしては,英国ARM社のARMコアと米国MIPS Technologies社のMIPSコアがあります.MIPSコアの場合には64ビットのコアもありますが,組み込み用途における主力はARMコア,MIPSコアともに32ビットの汎用RISCプロセッサになります.ARMコアは携帯電話を中心に,MIPSコアはゲーム機やネットワーク機器などを中心に,どちらも非常に多くの数量が使われています.しかし,たぶん,汎用の標準品として手に入れることは,ほとんどできないでしょう.
そして,汎用プロセッサそのものの役割も,ずいぶんと変わってきています.昔であれば,人気の高い「業界標準」のプロセッサ・コアを中心に特徴や周辺機能などを比較していれば,この特集もこと足りたに違いありません.実際,プロセッサ・コアは進歩しています.表1に示すARMコアの例を見ても,単なる32ビットRISCプロセッサから,音声,画像の処理のためにDSP(digital signal processor)的な機能などを取り込んで成長しているようすがわかるかと思います.
組み込みRISCプロセッサとして代表的なARMコアの変遷を示す.
ARMコアのアーキテクチャ・バージョン
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V4T
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V5TE
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V5TEJ
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V6
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ARM命令セット | ARM独自の32ビット固定長の命令セット |
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Thumb命令セット | プログラム・サイズを小さくするための16ビット固定長の命令セット |
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DSP拡張 | 積和演算と飽和演算のサポート |
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Jazelle | Javaの一部をハードウェア実行 |
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Media拡張 | マルチメディア処理向けSIMD命令の拡張 |
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代表品種 | ARM7TDMI ARM920 |
ARM946E-S ARM1020E |
ARM7EJ-S ARM926EJ-S |
ARM1136J-S |