ASIC量産設計に取り組むにあたっての心がまえ ──映像と通信が融合する"ディジタル新時代"に求められる技術者像

岡本光正

tag: 半導体

技術解説 2003年11月27日

●注目されていた新技術を採用するも歩留まりが改善せず

 二つ目の例は,ハード・ディスク・コントローラLSIの開発プロジェクトです.

 ハード・ディスクは記憶容量が命の製品です.記憶容量を上げていくと,データ読み出し時のデータ・エラー率が増大していきます.このため,データ書き込み時にはエラー訂正符号を付加してディスクに書き込みます.このエラー訂正符号の処理のために,コントローラLSIの中に,ある容量の記憶素子を実装しなければなりませんでした.

 この開発を始めた当時は,必要とされる記憶容量をASICに内蔵させるために「エンベデッドDRAM(DRAMコア)」の技術を採用することが最適であると判断し,半導体メーカとともに開発に着手しました.エンベデッドDRAMはメモリ・セルの構造が従来のSRAMよりもシンプルで,同じ容量を実現するときのマクロ(回路ブロック)のサイズが小さくなるという利点がありました(また,当時は,エンベデッドDRAMが期待の新技術として脚光を浴びていた).

 ところが,開発が終了し,量産に移行したのに,価格がいっこうに下がりません.エンベデッドDRAMの採用により,確かに小型・低消費電力のハード・ディスクを実現することができました.しかし,ASICの歩留まりが向上せず,低コスト化に失敗したのです.

 一方,半導体プロセスは進歩を続け,必要な記憶容量を実現するために(一般的なロジック・プロセスで実現できる)SRAM技術でも十分コストを抑えられるようになりました.後から考えると,必ずしも(専用プロセスが必要な)エンベデッドDRAMを無理に採用する必要はなかったわけです.

 このように,ASIC設計者の持つ知識や先見性によって,その開発成果は大きく変わってくるのです.

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