システム・レベル設計とはなにか
ここでは,組み込み機器およびシステムLSIの開発者を対象としたシステム・レベル設計手法の概要について解説します.エレクトロニクスの世界では,設計対象が複雑になりすぎ,従来の手法で手に負えない状況がやってくると,「設計抽象度の引き上げ」が発生します.たとえば,組み込みソフトウェアのプログラミングはアセンブリ言語からC言語に移行しました.ディジタルLSIの設計は回路図入力からRTLのHDL入力に変わりました.そして再び,設計抽象度の引き上げが起こるきざしが見えてきました.今度の転換は,組み込みソフトウェア開発者と回路設計者の双方を巻き込んだ大がかりなものになります.マイクロプロセッサを内蔵するシステムLSIとそれを搭載した組み込み機器の台頭が,設計手法の転換を促します. (編集部)
ふだん,なにげなく使っている「システム」という単語はたいへん便利な言葉です.辞書を引くと「組織,体系,順序,方式」とあります.「これがわが家のシステムです」と家内から言われて,毎朝出がけに1,000円札1枚をもらって通勤するわが身も,この「システム」という言葉にどっぷりつかっています.
一方,設計の世界でも,「システム」という言葉が氾らんしているように思います.電子機器の設計者は部品を組み上げて「システム」を開発しますし,半導体設計者はマクロ・セルやIPコアを組み合わせて「システムLSI」を構築します.ソフトウェア開発者にとっては,ソフトウェア・モジュールを統合したものが,すなわち「システム」です.さて,設計技術者にとっての「システム」とは,いったいなんなのでしょうか(図1).
〔図1〕設計技術者にとっての「システム」とは?
機器設計者,半導体設計者,ソフトウェア開発者,それぞれの世界にシステムのイメージがある.