システム・レベル設計とはなにか
●システム・レベルのカバー範囲は広い
今年(2000年)の1月末に,横浜で開催されたASP-DAC(Asia and South Pacific Design Automaiton Conference)のパネル・ディスカッションでは,"One Language or More?(How Can We Design an SoC at a System Level?)"というテーマが熱っぽく論じられました.その冒頭で,司会者のGary Smith氏(半導体調査会社であるGartnerGroup社,Dataquestのアナリスト)が「システム・レベル設計」のカバー範囲を図で説明しました.このときの図を筆者なりに整理して作り直したのが図2です.
これまで,LSIの設計にたずさわってこられた方にとっては,システムLSIの対象領域が予想以上に広い範囲をカバーしていることに驚かれるかもしれません.しかし,高性能なプロセッサや大容量メモリを搭載したシステムLSIの開発では,組み込みソフトウェアを切り離して考えることはできません.一方,組み込み機器などを開発している機器設計者は,プリント基板や筐体などにも配慮する必要があります.
ここに示されているシステム・レベルに該当する製品としては,ハード・ディスク装置,DVD装置,CD-ROM装置,メモリ・カードなどの記憶装置,プリンタ装置,通信機器,AV機器,情報家電などが挙げられます.図2からわかるように,システム・レベルにはソフトウェアもハードウェアも含まれています.読者のみなさんがどちらの領域に属している技術者であっても,ご自分がシステム・レベル設計の対象者であることを納得していただけると思います.
〔図2〕システム・レベル設計の領域
2000年1月に開催されたASP-DACでGary Smith氏が示したシステム・レベル設計の図を整理して作り直した.従来はLSI設計,プリント基板設計,ソフトウェア開発など,個別に開発手法が検討されてきた.システム・レベル設計では,これらを横断的に取り扱う.本特集では,おもに電子回路設計と組み込みソフトウェア開発の連携が必要となる組み込み機器,およびシステムLSIの開発手法に焦点をあてる.