インタラクティブ・アートとヒューマン・インターフェースの潮流 ― 日本科学未来館 メディアラボの展示から

鈴木 真一朗

『ノック!ミュージック - 打楽器からコンピューターに至る4つの進化論 - 』第7期展覧会 (2010年6月30日~10月11日,土佐 信道)

 明和電機の社長としても有名なアーティストの土佐 信道氏によって開催された第7期展覧会『ノック!ミュージック - 打楽器からコンピューターに至る4つの進化論 - 』では,テクノロジーの進化史をノック動作を行う装置「ノッカー」を通して示しました.ノッカーは,100Vが印加されると動作する装置です.

 早稲田大学の草原 真知子教授によれば,日本のメディア・アートはしばしばtoo playfulと批判されてきたそうです.遊び心を肯定し,先端科学と融合させるのは日本のお家芸です.一方,遊び心だけでなく作品の裏側にシリアスなコンセプトを潜ませる"見立て"も日本人が得意とする分野といえるでしょう.

 水のない庭に,山水と禅の境地を見る枯山水などはその最たる例です.『ノック!ミュージック』では,打楽器を叩く/叩かないで音楽を構成するのと,0と1のディジタル理論とを重ね,音による情報伝達とモールス信号から始まる電気通信時代の到来,産業革命とコンピュータの誕生までをわずか4ステップで実感できます(写真7).

 

写真7 ノック!ミュージック

 

 最後に設けられたiOSアプリ「エレビート タッチ」のコーナーではコンピュータの中で生まれた音楽が現実の世界で奏でられる様子を見て,人間が獲得してきた技術の恩恵をまざまざと感じられました.


『見えない庭』第8期展覧会
 (2010年12月1日~2011年3月21日,児玉 幸子)

 メディア・アートの躍進に,科学技術が一役買うのはいうまでもないでしょう.『見えない庭』は,材料工学と芸術の融合という観点から見ても大変興味深い展覧会です(写真8).電気通信大学の児玉 幸子准教授が作品の素材として用いたのは,磁性流体(磁性を持つ流体)です.もともとはNASA(米国航空宇宙局)において宇宙服の可動部をシールするために開発されましたが,その素材感とダイナミックに形を変える物性を活かして数々の作品へと昇華させました.

 

写真8 見えない庭

 

 本展覧会が,「見えない庭」と題されたのには意味があります.私たちが生活する空間には,重力や電力,磁力があふれていますが,それらを意識することはあまりありません.見えない力をスペクトル・アナライザやオシロスコープといった装置の画面上で見るのではなく,表現者の手と素材の科学的性質によって可視化します.それを通じて,日常生活に新たな視点がもたらされるのはアートの醍醐味といえるでしょう.


『もんもとすむいえ』第9期展覧会
 (2011年6月11日~12月27日,JST ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクト)

 2007年12月より実施されているJSTの戦略的創造研究推進事業(ERATO)五十嵐デザインインタフェースプロジェクト(研究総括:東京大学 五十嵐 健夫教授)の成果を集めました.同プロジェクトは,専門家ではないごく一般的なユーザがそれぞれのニーズに応じて高度なビジュアル・コミュニケーションや自己表現を手軽に行える基盤創出を目的としています.

 本展覧会では,実際の家を模した設えの中に合計13の研究成果を展示しています(写真9).一見すると多様なロボットに目が行きがちですが,ロボットではなく,ロボットを含む機械と人の関係性に注目してほしいと考え,"もんも"という架空のキャラクタを取り入れています.未来のライフ・スタイルや最先端のHuman Computer Interaction研究について触れる絶好の展覧会です.

 

写真9 もんもとすむいえ

 

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