インタラクティブ・アートとヒューマン・インターフェースの潮流 ― 日本科学未来館 メディアラボの展示から

鈴木 真一朗

『微笑みトランジスタ』第4期展覧会
 (2009年5月20日~9月28日,クワクボリョウタ)

 第4期展覧会『微笑みトランジスタ』は,メディア・アーティストのクワクボリョウタ氏によって開催されました.ご存じのように,トランジスタという小さな電子素子が今日の社会を支えています.『微笑みトランジスタ』では,トランジスタのようにワクワク感の増幅や心情のスイッチを担っている珠玉の作品たちが集められました.

 中でも「ニコダマ」(写真4)は本展覧会を通じて製品化された人気作です.まばたきする二つの眼を付けることであらゆるものを生物化してしまいます.点が三つあるだけで,人の顔と認識してしまうシミュラクラ現象という脳の働きが有名ですが,ニコダマは二つの眼とまばたき動作で生き物感を作り出しています.しくみは至ってシンプルながらも,複雑で強烈な感情を想起させます.人間の特性や習性までも取り込んで作品とした好例でしょう.

 

写真4 ニコダマ

 

『感覚回路採集図鑑』第5期展覧会
 (2009年10月7日~2010年3月1日,安藤 英由樹,渡邊 淳司)

 大阪大学大学院の安藤 英由樹氏と知覚研究者の渡邊 淳司氏によって開催された第5期展覧会『感覚回路採集図鑑』でも,人間の特性を活用した作品が幾つも展示されました.

 「グググの回路」(写真5)は,赤外線を用いて体験者の手の位置を測りながらも,手の動きと一致しない影を見せることで自分の体に不信感を感じるような奇妙な体験ができます.面白いことに,実は本作品で奇妙さを感じられない体験者も少なからず存在します.それは,主に視覚によって外界を知覚しているか,それとも筋肉の伸展度など体性感覚によっているかの違いからくるものです.

 

写真5 グググの回路

 

 これは,展示会場でメディア・アートからメディカル・サイエンスへとつなぐ絶好の科学コミュニケーションの場にもなりました.

 「ニコダマ」や「グググの回路」から,人間を取り込んだ作品の奥深さを垣間見ることができます.そもそもメディアとは,情報の媒体という意味ですから,その送り手であり受け手でもある人間を作品中に取り込むことはごく自然な行為です.メディア・アートの研究や制作の中で,人間の新たな側面が発見されることも多々あります.

 第4期『微笑みトランジスタ』と第5期『感覚回路採集図鑑』からは,人間を取り込んだアートの魅力を感じられます.


『ジキルとハイドのインタフェース』第6期展覧会
 (2010年3月17日~6月14日,稲見 昌彦)

 日本科学未来館は科学館ですが,科学を至上とするのではなく,人類が持続的に,より豊かに暮らすために育んできた総合智の一つとして科学をとらえています.そのため,科学や技術が社会にもたらす光と影をきちんと伝え,未来のさまざまな可能性を共に考えることを重要視しています.慶應義塾大学大学院の稲見 昌彦教授による『ジキルとハイドのインタフェース』は,インターフェース技術に関する光と影の面を切り出した意欲的な展覧会です.

 本展覧会を紹介するに当たって,2003年に米国「TIME」誌がCoolest Inventions 2003に選んだ「光学迷彩」(写真6)を取り上げないわけにはいかないでしょう.

 

写真6 光学迷彩

 

 道路標識などにも使われる再帰性反射材を利用して,マントの裏側に隠れるべき景色が透けて見えます.例えば,自動車の内装部分を利用して,運転席からは見えにくい助手席下部の安全を確認するなど,幅広い応用が提案されています.軍事や犯罪に悪用される危険な展示もあります.これほど強力な応用力を持つ技術ですが,子どもでも楽しみながら技術の本質をつかむことを可能にしました.

 

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