EVフォーミュラ,車検との戦い ―― 第9回 全日本 学生フォーミュラ大会(2)
●車検,そして走行
EVマシンの車検の現場にいくつか立ち会うことができた(写真14,写真15).審査員は,それぞれ専門のカテゴリの審査を行うので,同時に複数人(5~6人)がチェックをしていく.ガソリン車の場合は,決められた車検場に運び込むのだが,EVは出前車検だ.事前に用意されているチェック・リストに従って,どの項目も厳密にチェックされている.問題点が見つかれば,学生に指摘し,どのように改善すべきかを議論する.簡単に改善できるものだけでなく,大がかりな改修を求められることもある(そのときは長い議論になる).
写真14 静岡大学EVの車検の様子
青いチョッキ,緑のチョッキが審査員.学生は審査員からの質問に答えなくてはならない.
写真15 高い電位差が生じている
原因は何だ? の追究が始まった(静岡大学EV).

車検は,基本的に安全性の見地から行われるのだが,どうして改善が必要なのかは,学生に納得してもらえるように丁寧に説明されていたのが印象的だった.EVは,ガソリン車よりも緩いところもある(たとえば車体が傾いたときに,ガソリン漏れが生じないかのチェックなど)一方で,高電圧系(数百ボルト)があることから,電気系のチェックは厳しい.高電圧線と低電圧系は明示的に区別されなければならない.また,高圧系の電源切断のスイッチも手順も,コース場にいるオフィサも含めて誰にでもはっきりと分かるようにされていることが要求される.コースでフォーミュラが転倒したとき,真っ先に駆けつけた人がまず高圧系の電源スイッチをOFFできるようにするためだ.漏電に対するチェックも行われる(けっこうボディ部に電位が生じていることがあった).
30分か40分ほどで一通りの車検が終了する.審査員が戻ったあと,学生たちはリーダを先頭に,その対策法を協議する.もし分解・修理になると,分解して組み立てるだけで数時間はかかることになる.対策を終えると,再度車検を行う.ナイター設備がないので,基本的に審査員は日没までは付き合っているようだ.
●車検の仕上げはブレーキ・テスト
ここまでの車検は,基本的にエンジンをかけない.いや,EVなので「モータを駆動することはない」(高圧系の電源のONは行う).車検の最後に,ブレーキのテストが行われる.車検で唯一の動的テストである.
ブレーキ・テストは,端から見ていてきわめて単純明快である.ある速度で急ブレーキを掛け,四輪すべてがブレーキ・ロックされるかどうかを見るのだ.EV車は回生ブレーキも使うが,メインのブレーキ・システムは油圧ブレーキであった.
ブレーキ・テスト会場は,別に用意されている(写真16).EVもガソリン車も同じ場所でテストされている.各車輪(前後左右)ごとに担当審査員がいて,車輪がロックされているかをチェックする.
写真16 ブレーキ・テスト会場
静岡大学のEVのテスト.「位置について」.
