インテグリティな技術コラム(3) ―― ラプラス変換による分布定数の解
●ラプラス逆変換
式(28)および式(29)はラプラス逆変換の公式には出てきません.この分母の形をながめると,無限級数の和であることに気づきます.
すなわち,
ですね.そうすると,式(28)および式(29)は,
となります.ここで,ラプラス逆変換の公式
を用いると,式(31)および式(32)は,
のように時間関数として求めることができました.
ほとんどの場合,この近端と遠端の波形が求まればそれで終わりですが,おまけとして,線路上の任意の点xにおける波形を求めてみます. 式(10)に,式(26)および式(27)を代入します.
式(30)の級数展開を用いて,
これをラプラス逆変換すると,
となります.この式をじっくりながめると,前半はx/uの遅れの波形が2τごとに現れ,後半は-x/uの遅れが2τごとに現れます.-x/uの遅れとは,xが増加すると遅れが少なくなる,すなわちxとは逆の方向に進むことを意味します.つまり,前半は右に進む波で,後半は左に進む波です.反射係数がどのように寄与しているかも分かってきます.ぜひ,式をじっくりながめてください.
うすい・ゆうぞう
シグナル インテグリティ コンサルタント
http://home.wondernet.ne.jp/~usuiy/
◆筆者プロフィール◆
碓井 有三(うすい・ゆうぞう).1972年,富士通株式会社入社.回路技術部長,テクノロジ本部主席部長などを経て,2001年に退社.同年,株式会社マクニカ入社.同社CTOなどを経て,2008年退社.現在,フリーのコンサルタント.