iPhoneと組み込み技術で未来を考える(3) ―― 組み込みシステムとフェイル・セーフ

久保田 直行

tag: 組み込み

コラム 2010年4月15日

 まず,一つ目は,当然のことですが,システム自体の故障や停止です.もちろん,耐故障性は,古くから議論されてきましたが,無線で分散化されたセンサ・ネットワークでは,どのセンサが故障したのかなどの異常検出などを行うための方法論が必要になります.マルチホップを可能にするZigBeeなどの規格では,無線センサ・デバイス間での相互監視が考えられます(図2).例えば,屋内の通路に配置された人間検出用のセンサでは,人の歩行に合わせて,隣接するセンサが順次,反応します.



図2 人の歩行の検出と計測データの変化


 反応するセンサの順番は,人の移動をセンサ・ネットワーク上の空間的な変化としてとらえることができます.この変化のパターンは,人の流路とも考えられます.また,人の歩行の速度に合わせて,隣接するセンサの反応する時間の間隔も変化します.これによって,人の移動の時間的な変化,すなわち,ゆっくり歩いているのか,走っているのかなどを検出することができます.

 検出対象となる人間が一人の場合は,空間的・時間的な変化の構造を無線センサ・ノード間の反応のパターンで捉えることができます.ここで,4つのセンサ・ノードA,B,C,Dがあったとき,通常は,A-B-Cと連続的に反応していたのに,突然,A-Cとしか反応しなくなった場合,Bが故障している可能性が高いと考えられます.

 もちろん,送信元へのAck(肯定応答)がなければ,故障している可能性が高いのですが,センシング・デバイス周辺のみの故障の検出は困難な場合があります.従って,このような無線センサ・ノード間の隣接関係をリアルタイムで学習させながら,その学習結果から予測が外れることによる故障検出などが可能になります.

 一方,このような学習型センサ・ネットワークの構成を用いると,通常の流路とは異なる反応が見られた場合,たとえば,通常は,A-B-Cと連続的に反応しているのに対し,A-D-Cと反応した場合,これを不審者の可能性としてとらえることもできます.

 また,このような学習機能がある場合,最初にどこにどの無線センサ・ノードを配置するのかを確認せずに初期導入しても,初期導入時に,事前に用意された典型的な人の動きに合わせて,センサの時系列反応パターンを学習させれば,空間的な配置関係を理解することができ,初期導入が容易になります.

 以上のように,無線センサ・ノードの反応パターンを積極的に利用することにより,初期導入の簡素化や,故障検出,不審者検出など,さまざまなことが実現できます.

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