LSI周りのアナログ回路をシミュレータで理解する ―― RCフィルタ,降圧型,DC-DCコンバータ,アクティブ・フィルタなど

森下 勇

3 アクティブ・フィルタ回路

● 回路の構成

 アナログのアクティブ・フィルタ回路を作成して,アナログ回路シミュレータならではのモンテカルロ解析,そして最悪条件を求めるワースト・ケース解析を行います.

 回路は図18のような多重帰還型バンドパス・フィルタです.設計条件は,2次のバターワース特性を持ち,通過域は900Hz~1100Hz,ゲインを10倍としました.素子値はFilterLabというツールにより求めています.OPアンプは古典的な741を使用しました.


[図18] 多重帰還型アナログ・フィルタ回路
多重帰還型バンドパス・フィルタ.設定条件は2次のバターワース特性を持ち,通過域は900Hz~1100Hz,ゲインを10倍とした.OPアンプは古典的な741を使用,シミュレーション・ファイル名はMonteCarlo_WorstCase_of_BPF.sch.

● モンテカルロ解析

 モンテカルロ解析とは,回路内の複数の素子の値がばらつきを持っているとき,出力特性がどのように分布するかをシミュレーションする解析方法です.ユーザは各素子の公差や分布特性と繰り返し回数を設定します.シミュレータはユーザが任意に設定したばらつきの確率に従って,ランダムに各素子値を変化させます.ばらつきはロット性のばらつきの設定も可能です.

 素子値のばらつきの設定をユーザ・ファイルにまとめてステートメントで記述します.リスト1に示します.上から5行までが抵抗とコンデンサの分布特性の定義です.抵抗は±5%の公差を持ち,釣り鐘形の形状の正規分布(ガウス分布)で,±3σまで分布が広がっています.つまり上下限は±15%になります.コンデンサは±10%間に一様に分布しているという設定です.


[リスト1] 部品公差設定のユーザ・ファイル

 リスト1の下の2行は,パフォーマンス解析とも呼ばれる,波形表示プログラムに対するステートメントです.解析結果の各グラフから最大値などの特定のデータを抽出できます.この例では,モンテカルロ解析で得られた複数のグラフから,ゲインのピーク値と中心周波数を抽出し,それぞれ新たなVDBpeakとFpeakという変数に代入しています.


 図19はモンテカルロ解析の設定で,100回解析を繰り返します.その下のシード値は,通常は0のままとします.実行のたびに別の乱数が選ばれます.


[図19] モンテカルロ解析の設定
100回解析を繰り返す.その下のシード値は,通常は0のまま,実行の度に別の乱数が選ばれる

 図20はプロットの設定です.出力のゲインをデシベルで表示します.解析結果を図21に示します.波形表示プログラムのメニュー・バーから,「Format」→「Monte Carlo Format」を選択してください.プロットの色が1色になり,見やすくなります.


[図20] AC解析のプロット設定
出力のゲインをデシベルで表示.他の欄はデフォルトのまま.

 


[図21] モンテカルロ解析結果

 プロットの設定ダイアログで[New]ボタンをクリックし,図22のようにsetup #2を入力してください.表示するグラフのTypeは,Histogramとします.同じようにsetup #3を,図23のように入力します.


 プロットの設定ダイアログで,setup #2だけにチェックを入れて,再度解析を実行します.ゲインのピーク値のヒストグラムが図24です.データから算出された理想の正規分布も表示してみました.同じようにしてsetup #3だけにチェックを入れて,再度解析を実行します.その結果得られた中心周波数のヒストグラムが図25です.


[図22] パフォーマンス解析プロット設定(1)


[図23] パフォーマンス解析プロット設定(2)

 


[図24] パフォーマンス解析結果(1)


[図25] パフォーマンス解析結果(2)

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