LSI周りのアナログ回路をシミュレータで理解する ―― RCフィルタ,降圧型,DC-DCコンバータ,アクティブ・フィルタなど
tag: 半導体 電子回路 ディジタル・デザイン
技術解説 2009年5月27日
2 降圧型DC-DCコンバータ回路
● 回路の構成と解析の設定
AC-DCコンバータを利用して,交流100Vから直流12Vのバス電源を得たとします.システムのメイン基板上で5Vや3.3Vの電源がほしい場合,降圧型DC-DCコンバータが使われます.入出力間の電圧差が大きいため,リニア・レギュレータは損失が大きすぎて使えません.効率の高いスイッチング技術を使った電源が必要です.
図15は,降圧型DC-DCコンバータの動作原理図に近いものです.実際の回路においてスイッチ部には,バイポーラ・トランジスタやパワーMOSFETが使われます.また,実用回路とするには,出力電圧をモニタして,スイッチングのON/OFFのデューティを変える負帰還回路が必要です.
[図15] 降圧型DC-DCコンバータ回路
シミュレーション・ファイル名はStepDown.sch.本記事で紹介するシミュレーション・ファイルは筆者のWebページから入手可能.
パルス信号源Vpwmは,スイッチィング周波数100kHz,デューティ・サイクル29.5%固定としています.R1,R2,C2は,SPICEのスイッチ動作によるシミュレーションのエラー防止のための遅れ回路で,実際の回路とは無関係です.
フリーホイール・ダイオードD1は,適度に理想的な順方向電圧の小さなモデルとしました.コイルL1,出力コンデンサC1にも,適当な直列抵抗を付加しています.
スイッチとダイオード・モデルのパラメータは,回路図エディタのメニュー・バーから,「Simulation」→「Open User SPICE Commands File(.mis)」を選択すると,ユーザ・ファイルが開き,参照できます.
時間0から2msまで過渡解析を行います.なお,結果の波形を拡大する都合上,ステップ時間の上限値を100nsとしています.
● 解析結果
図16が過渡解析を行った結果です.電源が理想的なステップ入力であること,負帰還を掛けていないことなどにより,起動時に出力電圧のオーバシュート,大きな突入電流が観測されています.
[図16] DC-DCコンバータ解析結果(全体)
過渡解析を行った結果,電源が理想的なステップ入力であること,負帰還を掛けていないことなどにより,起動時に出力電圧のオーバーシュート,大きな突入電流が観測されている.
図17は定常状態に近くなった部分を拡大しています.拡大方法は,波形を表示した状態で,カーソルをグラフ上に置き,キーボードの[+]キーを押してください.カーソルを移動すると拡大用の形状にカーソルが変わりますので,拡大したい部分を,マウス・ボタンを押しながら四角で囲みます.元に戻すには,[-]キーを押します.
[図17] DC-DCコンバータ解析結果(拡大)
定常状態に近くなった部分を拡大した.I(VA)がスイッチONでスイッチに流れる電流,I(D1)がダイオードを流れる電流,これらが足し合わされた電流がI(L1)としてコイルを流れ,コイルとコンデンサにより平滑されて,出力電流I(RL)となっていることが分かる.
I(VA)がスイッチONでスイッチに流れる電流,I(D1)がダイオードを流れる電流です.これらが足し合わされた電流が,I(L1)としてコイルを流れ,コイルとコンデンサによって平滑されて,出力電流I(RL)となっていることが分かります.
この例では動作原理図に近い回路図を使用しました.このような基本回路をベースに,さらに解析したい部品だけを理想的な部品からより現実に近いものに置き換えて解析することも,アナログ回路シミュレータの有効な活用法の一つです.