ZigBeeモジュールを使用したモデル・ロケット軌道計測システムの製作

松本 哲明

 結果は,275mまで通信できました.今回のシステムでは,ペイロード側のCPUとXBee-PROの位置が近いため,CPUから生じるノイズの影響があること,および地上局のパソコンが発生するノイズに地上局側のXBee-PROが影響されること,ペイロードが自転車に取り付けてあるため自転車のフレームによって電波が遮断されることなどから,カタログ・スペックの1/3以下(200m以下)になってしまうのではないかと予想していました.思ったよりも優秀なモジュールだと感じました.

● 加速度センサとZigBee用の基板を作成

 飛行中に計測するデータの種類は加速度にしました.加速度センサはFreescale Semiconductor社の「MMA7261Q」が手元にあったため,これを使用することにしました.このセンサの外形寸法は6mm×6mm×1.34mmと小型で,X,Y,Zの3軸の加速度を最大10gまで計測できます.測定レンジは2.5g,3.3g,6.7g,10gの4段階に切り替えられます.今回は10g固定で使用することにしました.

 このセンサを取り付けるためのセンサ基板を作成し,その上にXBee-PROを搭載しました(図4).このセンサ基板の作成には,Hamana-4に参加した他チーム「S.W.A.T.」にご協力いただきました.
図4 加速度センサ+ZigBee基板

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(a)パターン図


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(b)回路図

 観測モジュールの搭載位置は,モデル・ロケットの重心と圧力中心を考慮しながら決定しました(稿末のコラム参照).

● 伝送データのフォーマットを決定

 ロケットから地上に送信するデータはタイムスタンプ,X,Y,Zの加速度の四つのデータです.搭載されるCPU(H8/3069F)のシリアル・コントローラが可能な伝送速度は38,400bps,OSのインターバル・タイマは10msなので,伝送するデータ・フォーマットは図5のように決定しました.地上局のパソコンで受信したデータを処理しやすいようにCSV形式にしています.

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図5 伝送するデータ・フォーマット
データをCSV形式で保存するため,タイムスタンプや加速度のデータもASCIIコードで出力している(1文字当たり8ビット).また,UART(調歩同期)なのでデータ以外にスタート・ビットとストップ・ビットが付加され,伝送路上では1文字当たり10ビットになる.データは22文字なので,データ長は最大で220ビット.10msごとに220ビットの伝送なら,伝送路の通信容量(38,400bps)の60%程度なので,これならエラー・リカバリが発生しても充分な帯域が確保できると考えていた.

 伝送エラーは,ZigBeeの通信プロトコルで復旧されるとのことです.高速移動中の伝送において実際に伝送エラーがどの程度発生するのかという調査も兼ねて,今回はアプリケーション・レベルでのエラー検出や復旧は行わないことにしました.

 地上局はパソコンのシリアル・コンソールを使用して上記のデータを受信し,ログ・ファイルに書き込むことにしました.

● ソフトウェア構成

 冒頭に説明したように,筆者らのチームは開発リソースが少ないため,できるだけソフトウェア部品として使用できるものを組み合わせることにしました.OSはH8/3069Fで実績のあるμITRON仕様準拠のTOPPERS/JSPカーネル(リリース1.4.3)を,シリアル通信用ソフトウェアは筆者の所属会社の開発ミドルウェアに付属しているシリアル・コンソール通信モジュールを使用することにしました(図6)

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図6 当初のソフトウェア構成
A-Dコンバータの割り込み処理に時間がかかるため,割り込みは使用しないことにした.また,データ取得の周期を10msから20msに変更した.

 しかし,ソフトウェアを作成してデバッグに入ったところで,重大な問題が2件発生しました.一つは,シリアル通信の処理量が多く,10msごとにデータを送信するのでは処理が追いつかないこと,もう一つは,A-Dコンバータの割り込みを使用すると処理が遅くなることでした.

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