ZigBeeモジュールを使用したモデル・ロケット軌道計測システムの製作
携帯電話やPHSは,場所によっては使用できないことがある("圏外"が存在する)ため,NGとしました.UWBは使用可能なモジュールが存在せず,Wi-Fi,Bluetoothは伝送距離が足りないため,NGとしました.最終候補としてZigBeeと特定小電力無線が残ったのですが,ZigBeeの方が小型,軽量なモジュールが多い(2足歩行ロボットなどにも使用されている)と考え,ZigBeeに決定しました.
後になって分かったことですが,ZigBeeの通信プロトコルでエラー回復が行われることから,アプリケーション・レベルでのエラー回復のための処理を開発する必要がないという,ありがたい効果もありました.
● ZigBeeモジュールの選定
ZigBeeモジュールの選定にあたっては,「200m以上の伝送が可能で,Telec認証をモジュール単体で取得しているもの」という条件で探しました(Hamana-4という公式のプロジェクトで使用するため,認証取得を条件とした).
2足歩行ロボットに使用されているモジュールは確かに小型で消費電力が低いのですが,伝送距離が数十メートルというものばかりで,筆者らの条件に合致するものがなかなか見つかりませんでした.そこで同僚に相談したところ,MaxStream社のXBee-PROというZigBeeモジュールが,2007年2月にTelec認証を取得したということを教えてくれました.
早速このモジュールを調査したところ,伝送距離は1,600m,モジュールのサイズは24mm×33mm,重量は4g(U.FLコネクタ搭載時)と軽量でした(表2.なお,1,600mという伝送距離はRF出力が60mWの場合の性能.日本国内で利用可能な10mW出力の場合は600mとなる).モジュールはインターネット上で販売されており,入手も容易であることから,このモジュールを採用することにしました(写真2).
性能 | |
出力 | 10mW / 16mW / 25mW / 40mW / 60mW(設定により切り替え可能) |
伝送距離(室内) | 最大100m(60mW出力時) |
伝送距離(屋外,遮へい物なし) | 最大1.6km(60mW出力時) / 最大600m(10mW出力時) |
RFデータ転送速度 | 250Kbps |
インターフェース・データ転送速度 | 最大115.2Kbps |
動作周波数 | 2.4GHz |
ネットワーク構成 | ピア・ツー・ピア,ポイント・ツー・ポイント,ポイント・ツー・マルチポイント,メッシュ |
受信感度 | -100dBm |
ネットワーク | |
スペクトラム拡散タイプ | DSSS(Direct Sequence Spread Spectrum) |
ネットワーク構成 | ピア・ツー・ピア,ポイント・ツー・ポイント,ポイント・ツー・マルチポイント,メッシュ |
暗号回路 | 128ビット AES(Advanced Encryption Standard) |
電力 | |
動作電圧 | 2.8V~3.4V |
送信時の消費電流 | 215mA(3.3V動作時) |
受信時の消費電流 | 55mA(3.3V動作時) |
スリープ時の消費電流 | 10μA未満 |
物理的特性 | |
サイズ | 2.438cm×3.294cm |
重量 | 4g(U.FLコネクタ搭載時) |
アンテナ・オプション | U.FL RFコネクタ,チップ・アンテナ,ホイップ・アンテナ |
動作温度 | -40℃~+85℃ (工業用) |
表2 ZigBeeモジュール「XBee-PRO」の仕様(一部)
写真2 観測キットにZigBeeモジュール「XBee-Pro」を搭載したところ
一番上の六角形のモジュールがXBee-Proである.
● ZigBeeモジュールの実力を試す
XBee-PROはカタログ・スペックとして,10mW出力時に見通しで600mという伝送距離が公表されています.しかし,実際の使用環境はメーカの性能測定時とは異なるため,使用時と同じ環境で伝送距離を測定しました.
測定は河川敷で行いました.600m伝送のテストを徒歩で行うのは時間的にも体力的にも厳しいので,自転車のカゴにXBee-PROを搭載したペイロードを取り付けて,ペイロードからデータを送信しながら地上局から遠ざかっていき,データが届かなくなるポイントまでの距離をレーザ距離計で計測しました(写真3).
写真3 ZigBeeモジュールの伝送距離を測定
自転車のカゴにペイロードを取り付けて,ペイロードからデータを送信しながら地上局から遠ざかっていき,データが届かなくなるポイントまでの距離をレーザ距離計で計測した.
(a)送信側(ペイロード)
(b)受信側(地上局)