Atom&EP80579,組み込みボードの中枢を担う ―― 組み込み市場を狙う最新Intelプロセッサの動向
ここでは組み込み向けのボード・コンピュータやCPUモジュール,ネットワーク機器などへの採用が始まっているAtomプロセッサ,および1チップ・ソリューションのEP80579 Integrated Processorについて解説します.いずれも低消費電力を特徴とするx86系プロセッサの新製品で,今後の組み込み用プロセッサの主流になると期待されています.(編集部)
2008年に米国Intel社は,組み込み分野に向けた二つの新しいx86系プロセッサを発表しました.低消費電力プロセッサ「Atom」ファミリと,システムLSI「EP80579」です.この二つの新しいプロセッサはいずれも,今後しばらくの間,組み込み用x86系プロセッサの主流を担う重要な製品になると期待されています.本稿では,「Atom」ファミリと「EP80579」の概要について説明します.
●低消費電力,低コストのAtomプロセッサ
AtomファミリはIntel社の最新の製造技術である45nmプロセスを駆使して製造されています.消費電力が最大でも2.5W程度とx86系プロセッサとしては極めて低く,チップ面積が25mm2未満と非常に小さいのが特徴です(写真1).消費電力の低さは空冷ファンを持たない,すなわち低騒音で信頼性の高いシステムを開発できることを意味します.チップ面積の小ささは量産コストが低くなること,すなわちAtomファミリは価格を下げられる余地がとても大きいことを期待できます. Atomの製品名を持つマイクロプロセッサは現在,2系統が存在しています.N200系とZ500系です.N200系は製品化前の開発コードでは「Diamondville」となっていたマイクロプロセッサで,N270とN230が製品化されています.Z500系は開発コードでは「Silverthorne」となっていたマイクロプロセッサで,Z540,Z530,Z520,Z510,Z500の5品種が製品化されています(表1).
名称(ブランド名) | Intel Atom Processor | Intel Atom Processor / Intel Centrino Atom Processor |
製品名 | N270 | Z540 |
開発コード名 | Diamondville | Silverthorne |
動作周波数 | 1.60GHz | 1.86GHz |
製造技術 | 45nm,High-k/金属ゲート | |
トランジスタ数 | 4,700万 | |
チップ寸法(チップ面積) | 7.8mm×3.1mm(25mm2未満) | |
1次命令キャッシュ | 32Kバイト | |
1次データ・キャッシュ | 24Kバイト | |
2次キャッシュ | 512Kバイト | |
FSBの動作周波数 | 533MHz | |
命令セットの対応 | SSE2,SSE3,SSSE3 | |
マルチスレッディングの 対応 | あり | |
アドレスできるメモリ空間 | 4Gバイト | |
最大消費電力(TDP) | 2.5W | 2.4W |
最大pn接合温度 | 90℃ | |
パッケージと外形寸法 | 22mm角のFCBGA | 13mm×14mmのFCBGA |
組み合わせる チップセットの例 | 82945GC(ノースブリッジ) /82645GSE(ノースブリッジ) | US15W(ノースとサウスの集積) |
主な用途 | ネットブックや ネットトップなど | MID(Mobile Internet Device)など |