組み込み機器に欠かせなくなった不揮発メモリの最新動向 ―― フラッシュROM,FeRAM,MRAMの現在
●非同期SRAMやEEPROMと互換性を持たせたFeRAMを製品化
FeRAMについては,例えば富士通マイクロエレククトロニクスが256Kビット~2Mビットの「MB85R-FeRAMファミリ」を製品化しています(表3).アクセス速度は70ns~100nsと比較的低速ですが,書き換え回数は10の10乗回(10億回)が可能となっており,フラッシュROMやEEPROMをしのぎます.
特徴的なことは,48ピンのTSOPパッケージに封止されており,非同期SRAMと同一パッケージであることです.ピン機能に互換性があるため,非同期SRAMを搭載した組み込み機器であれば,基板のレイアウト設計を変更しなくても,そのままの状態でFeRAMに差し替えられます.
また,同じ技術を使った「MB58RS256」というICも登場しています.このICの容量は256Kビットで,SPIインターフェースを備えています.これは,従来のEEPROMの置き換えを狙ったものです.
型名 | 容量 | ビット幅 | インターフェース | 書き換え回数 | 駆動電圧 | パッケージ |
MB85R256H | 256Kビット | x8 | LVTTLパラレル | 10の10乗回 | 3.3V | 48ピンTSOP |
MB85R1001 | 1Mビット | x8 | LVTTLパラレル | 10の10乗回 | 3.3V | 48ピンTSOP |
MB85R1002 | 1Mビット | x16 | LVTTLパラレル | 10の10乗回 | 3.3V | 48ピンTSOP |
MB85R2001 | 2Mビット | x8 | LVTTLパラレル | 10の10乗回 | 3.3V | 48ピンTSOP |
MB85R2002 | 2Mビット | x16 | LVTTLパラレル | 10の10乗回 | 3.3V | 48ピンTSOP |
MB58RS256 | 256Kビット | x1 | SPIシリアル | 10の10乗回 | 3.3V | 8ピンSOP |
●MRAM製品の特徴は高集積と幅広い動作温度範囲
MRAMについては,東芝やNECなど,複数の企業が研究・開発を行っています.このうちFreescale Semiconductor社は,記憶容量が4MビットのMRAM「MR2A16A」を既に製品化しています.アクセス時間は35ns,最大消費電流は150mA前後という仕様で,44ピンのTSOPパッケージに封止して提供しています.MRAMは,技術的にFeRAMよりも単位面積当たりの集積度を引き上げることが容易です.そこで,数Mビット~数十Mビットの記憶容量を持つ製品の登場が期待されています.
MRAMの特徴の一つは,車載用や軍事用などで要求される,幅広い温度範囲で動作保証された品種が用意される点です.英国e2V社は同社の既存製品の拡張版として,動作温度範囲が-40℃~100℃,および-55℃~125℃のMRAMを提供しています.こちらも既存製品と同一パッケージで提供されており,温度範囲の選択肢が広がります.
なお,Freescale Semiconductor社が開発したMRAM製品やその関連技術については,2008年6月より,同社が出資する合弁会社のEverSpin Technologies社への技術移管が始まっています.
いくら・まさみ
FPGA-Magician / 来栖川電工(有)