組み込み機器に欠かせなくなった不揮発メモリの最新動向 ―― フラッシュROM,FeRAM,MRAMの現在
●低電圧駆動のフラッシュROMは入手性などに注意
昨今では半導体の低電圧化が著しく,そのため,部品調達において特別な配慮が必要となっています.
例えば,大容量のNAND型フラッシュROMとEEPROMは低電圧駆動のものが多く,入手性もそれほど悪くありません.これに対して,NOR型フラッシュROMにも低電圧駆動品は用意されているのですが,入手性が良いとは言えない状況です.これは,大容量のデータを取り扱う機器で低電圧駆動のフラッシュROMが使われており,フラッシュROM製造各社がストレージ用途にNAND型フラッシュROMの新製品を積極投入しているためです.また,NAND型フラッシュROMはプロセッサのブートを行える程度の容量で十分,という判断から,新規の大容量品の種類はそれほど多くありません.
大容量メモリが必要な場合は,仮にメーカが設計者の希望するフラッシュROMの情報をWebなどで公開していたとしても,販売代理店などに相談して,入手性の良し悪しを確認しましょう.
なお,携帯端末向けプロセッサの中には,命令コードの格納領域にNAND型フラッシュROMを使用できるものもあります.例えば米国Freescale Semiconductor社の「i.MX27」は,内蔵されたNAND型フラッシュROMコントーラの初期化をブート時に自動的に行い,プログラム・コードを実行できます.
●マルチチップ・パッケージで実装面積を低減
機器のサイズが小さく,実装可能な部品点数が限られる用途では,フラッシュROMとほかの機能のLSIを1パッケージに収めたデバイス(マルチチップ・パッケージ)が用いられます.例えばスイスNumonyx社(Intel社,STMicroelectronics社が共同で設立した合弁会社)が提供する「M36P/M38Pファミリ」は,SRAMやSDRAMとNOR型フラッシュROMを一つのパッケージに封止しています.
さらにSRAMとフラッシュROMを一つのパッケージに収めた複合メモリ・デバイスでは,アドレス/データ・バスの多くを共通化できるため,プロセッサとメモリの間の配線数を減らせます.結果的に,部品による基板上の占有面積を減らしつつ,必要な機能を提供することが可能となります.
こうしたマルチチップ・パッケージは,ほとんどの携帯電話で採用されています.低電圧駆動,および実装面積の低減を実現しやすいことから,今後,ますます組み込みシステムにおいて採用されると考えられます.