組み込み機器に欠かせなくなった不揮発メモリの最新動向 ―― フラッシュROM,FeRAM,MRAMの現在

井倉 将実

tag: 半導体 電子回路

技術解説 2008年9月16日

2.新世代の不揮発メモリが市場へ

 揮発性のメモリであるSRAMやDRAMの場合と異なり,不揮発メモリであるフラッシュROMは,速度や書き換え可能回数(つまり寿命)に気をつける必要があります.一般に,産業用などの組み込み機器には長期間の運用が要求されます.SRAMやDRAMと同じように頻繁にフラッシュROMのデータを書き換える,というようなことは行われていません.

 一方SRAMやDRAMの場合は,電源を切ると情報が消えてしまうという問題があり,バッテリ・バックアップなどの技術を使って情報を保持し続ける必要があります.

 そこで,これらの双方の特徴を生かした新しいタイプのメモリ・デバイスに注目が集まっています.これらのメモリに対する要求項目は,以下のとおりです.

  • SRAM,DRAMのようにアクセス速度が速い
  • DRAMのような大容量化が可能
  • フラッシュROMのように電源を切っても情報を保持し続ける
  • 低電圧/低消費電力で駆動可能
  • 書き込まれたデータが長期間保持されることを保証

 現時点で,これらの要求のすべてを満たす半導体デバイスは登場していませんが,これらが実現すれば,例えば組み込みOSが動作中に電源を遮断しても,再機動時に何事もなかったかのように処理を継続できたり,システムの稼働率を上げられたりします.

 現在,これらの要求の一部を実現できる半導体デバイスとして,FeRAM(Ferroelectric RAM)やMRAM(Magnetic RAM)があります.FeRAMは,DRAM技術の延長線上の技術を採用しており,強誘電体に情報を記憶します.MRAMは名称から分かるとおり,複数の合金からなる磁性体を利用したセルを大量に並べて記憶する方式をとります.

 方式に違いはありますが,表2に示すようにいずれもSRAM/DRAMとフラッシュROMの両方の特徴をうまく取り入れています.このほか,OUM(Ovonic Unified Memory)やPRAM(Phase Change RAM)と呼ばれる新しい技術を採用した不揮発の高速メモリについても研究が進んでいます.

項目 SRAM DRAM フラッシュROM FeRAM MRAM
揮発性/不揮発 揮発性 揮発性 不揮発 不揮発 不揮発
大容量化への対応 中容量 大容量 大容量 小容量 中容量
アクセス時間 高速 中高速 低速 中速 中速
書き換え回数 無制限 無制限 ~10万回 ~10億回 10億回以上
データ保持期間 10年 10年 10年
低電力化 可能 容易 容易
表2 不揮発メモリの特徴

組み込みキャッチアップ

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