HDMI登場の背景と概要 ―― 映像インターフェースの推移から学ぶ

柴田 修

tag: 実装 電子回路

技術解説 2008年6月10日

 課題(2)のオーディオ伝送を実現する方法として,ブランキング区間に着目しました.パケット化したオーディオ・データを映像信号の水平/垂直の帰線区間に時間多重して伝送する方式を採用しました.これによって物理層の伝送レートを変更することなく,DVIとの互換性確保にも成功しました.

 課題(3)のコンシューマ・エレクトロニクス機器専用ビデオ・フォーマットを実現するために,DVIで採用されていたDDC(Display Data Channel)とEDID(Extended Display Identification Data)によるディスプレイ情報交換をHDMI用に拡張し,CEA-861に従った記述を追加しました.

 さらに課題(4)の機器制御を実現するため,CEC(Consumer Electronics Control)信号を追加しました.CECは双方向通信が行える制御専用信号です.この信号を使ってリモコン情報の交換を行うことにより,AV機器間の連携を向上させられます.

● コンプライアンス・テストで相互接続性を確保

 HDMIでは相互接続保証を実現するための明確な指針が定義されています.一般的に,相互接続保証を実現する方法としては,総当たり戦で接続性を確認するPlugFest方式と,標準測定機器を定義し各機器個別に合否を判定するコンプライアンス・テスト方式があります.

 PlugFest方式はDVIで採用されました.接続テストの合否判別結果は明確で,テストを行った機器同士は間違いなくつながるのですが,テストしていない組み合わせの接続は保証されません.実際の市場でつながらない機器が登場した場合,「仲間集め」や「他社バッシング」に走る傾向になり市場が混乱してしまいます.コンシューマ市場には適しません.

 それに対してコンプライアンス・テスト方式は,標準信号源ならびに測定機器を用いて,詳細物理パラメータの品質確認を定量的に行います.直接,機器間の接続をテストしなくても,合格したもの同士はほぼ例外なく接続性が確保されます.

 HDMIでは,相互接続の問題が起こらないように,仕様策定と同時にコンプライアンス・テスト仕様を策定しました.各メーカ(Adopter)は製品出荷前に,このテストに合格する必要があります.また標準的なガイドラインを与える目的で,全世界に7カ所のATC(Authorized Test Center)が開設されています.標準のテスト・ツールも推奨され,同じ基準での合否判定を可能にしています.この仕組みの根幹となるコンプライアンス・テスト仕様が厳格に定められています(図7)

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図7 HDMIのコンプライアンス・システム
厳格なコンプライアンス・テストにより相互接続性を確保.

● ディジタル・インターフェースの今後の技術動向

 HDMI登場後もDVIは,パソコン特有の多様な解像度へ対応することによりHDMIと住み分けし,パソコン市場では幅広く採用されています.しかし最近の市場トレンドとして,「1080pより大きな解像度は必要としないがオーディオ同送は重宝される」,いわゆるホーム・シアタ・パソコンにはHDMIが普及しつつあります.

 昨今は映像・音声ともにパケット化して伝送するDisplayPortのような方式も一部で提案されています.テレビの世界では,最終的な表示デバイスへの信号インターフェースを目的とした場合,ラスタ・スキャン(走査線方式)の方がパケット方式よりも,放送フォーマットとの整合性に優れています.

 HDMIは民生市場からの要望に基づいて順次仕様拡張を図っていく進化可能なインターフェースです.過去との互換性を重視して,マンダトリ(仕様で定められた義務)を追加するだけでなく,可能性を広げられるようにオプションを追加していきます(図8)

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図8 HDMIの歴史
民生市場の要望により仕様拡張され,デファクト・インターフェースへ.

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