HDMI登場の背景と概要 ―― 映像インターフェースの推移から学ぶ

柴田 修

tag: 実装 電子回路

技術解説 2008年6月10日

4)使用する機器によって接続の相性があった

 それ以外にもi.LINKは使用する機器によっては,相互接続性の相性が出ることがありました.例えばA社のSTBとB社のレコーダを接続した場合,個体によっては相手をうまく認識できないことがあり,時々録画予約を失敗するなどの事例が報告されています.そうした消費者の不安を解消する対策として,各メーカは製品を販売する際にほかの製品との互換テストを行い,接続確認機器リストなどの情報を提供しています.

 i.LINKのそうした教訓に習いHDMIでは,仕様(HDMI Specification)と同時にコンプライアンス・テスト仕様を策定しています.運用ルールを工夫することで,市場での接続事故を未然に防ぎ,高い相互接続性を提供しています.

 これまでの説明で,i.LINKについて少々辛口に評価してきました.読者の中には,HDMIが普及することで将来i.LINKが必要なくなる,という印象を持った方もいるかもしれません.しかし,前にも触れた通り,i.LINKはディジタル録画目的で使用することが許された唯一の方式です.装置間にネットワークを構築する上において必須であり,HDMIがi.LINKに取って代わるわけではありません.HDMIとi.LINKは,インターフェースとネットワークというそれぞれの特徴を生かし,オーディオ・ビジュアル機器環境の中で共存する関係にあります(図6)

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図6 i.LINKとHDMIの共存

● DVIを民生機器向けに拡張したHDMI

 ベースバンド映像信号を伝送できるインターフェースとしては,当時すでにDVI(Digital Visual Interface)がありました.DVIは1998年9月に米国Intel社がIDF(Intel Developer Forum)で発表したDDWG(Digital Display Working Group)によって,1999年4月に規格化されました.現在ではデスクトップ・パソコンのディスプレイ用ディジタル映像インターフェースとして広く使われています.

 2000年には,著作権保護の機能を追加してコンシューマ・エレクトロニクス向けに用途を広げようとする動きもありましたが,以下の課題があり,そのまま市場に投入することは困難でした.

(1) コネクタ寸法が大きく使い勝手が悪い
(2) オーディオが伝送できない
(3) コンシューマ・エレクトロニクス向けビデオ・フォーマットが規定されていない
(4)テレビ,ソース機器を制御するためのコマンドが用意されていない

 そこで2002年12月に,日立製作所,松下電器産業,Philips Electronics社,ソニー,Thomson社,東芝の民生機器メーカと,高速伝送のコア技術を持っている米国Silicon Image社の7社が,次世代オーディオ・ビジュアル機器向けインターフェースとしてHDMI仕様をリリースしました.

 HDMIはDVI技術をベースにしています.ここでDVIからHDMI用に新たに追加した機能について,少し詳しく説明します.まず,HDMIではコネクタのデザインを一新しました.DVIコネクタのピン配置は伝送路として見るとアンバランスな特性を持っていました.HDMIでは,対称なピン配置を採用することで,インピーダンス特性を改善しました.さらにコネクタを小型化すると同時に,DVIで採用されていたねじ止めロック式を廃止しました.フリクション・ロック式を採用することで,幼児が足を引っ掛けたら抜けるなどの,実使用時の安全面についての配慮も施されました.

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