窓が開いたらメールを出す装置の製作 ―― 無線LANモジュールを利用しセキュリティ装置を自作する
今回はセキュリティ装置を作ることにした.窓が開けられると,ユーザの携帯電話やパソコンに窓が開いたことを電子メールで知らせてくれる.ここでは,前回の空撮に使用した無線通信(LAN)モジュール「WiPort」を利用する. (編集部)
前回のDIY記事では,カメラ付きのたこに無線LANを載せた例を紹介しました.記事中では,無線LAN-シリアル通信変換器として米国Lantronix社の「WiPort」を使いました.今回は,このWiPortのメール送信機能を利用した事例を紹介します.
窓からの侵入者の手口は一般的に,手が入るぶんだけガラスを破り,開錠して,それから窓を開ける方法がほとんどです.製作する装置(写真1)は,窓が開いたことをトリガにして電子メールを出します.
窓を開けると装置のすぐそばにある磁石が離れ,装置内のリード・スイッチがONからOFFになります.これをトリガとしてタイマ経由でリレーを動かし,WiPortに一定時間電源を供給します.WiPortは起動時,自動的にメール・サーバにメールを出す設定にしておきますので,携帯電話やPHSなどにメールが届きます.
●製作する装置を利用するための条件
無線LANアクセス・ポイント経由でメール・サーバと通信出来る環境がある事が条件です.WiPort内蔵のメール送信機能はセキュリティをかけていないメール・サーバを利用でき,POP Before SMTPなどに非対応です.ご利用中のメール・サーバを提供しているネットワーク管理者,プロバイダにお問い合わせ下さい.
●ハードウェアの製作
図1に回路図を示します.以下に回路動作を説明します.
▲図1左上
リード・スイッチにチャタリング防止回路を接続しています.
▲図1中央上(パルス発生回路)
インバータを5個連結したディレイ回路とORゲートの組み合わせにより,リード・スイッチON→OFFのときだけ"L"パルス(実測で39ns)を発生させます.
▲図1中央上(タイマ回路)
タイマ回路にLMC555(米国National Semiconductor社)を使っています.LMC555は消費電流が少ないことや,トリガ入力の最小パルス幅が20nsでよいことから使いました.また,1MΩ抵抗と100μFの電解コンデンサを接続し,後述の理由で意識的に長めの100s間,出力を"H"に保つタイマとしています.
もし,LMC555以外の555系タイマICを検討するならば,トリガ入力の仕様に特に気を付けて下さい.トリガ入力の遅延回路を変更しないと適合しない場合があります.
▲図1右上
LMC555の出力ではリレーのコイルを駆動できませんので,トランジスタで増幅しています.リレー・コイルから発生する逆起電力対策用のダイオードを絶対に忘れないように付けて下さい.
リレーは2回路入りを使っていますが,使っているのは1回路だけです.未使用の1回路で赤色LEDを付けるなどが考えられます.また,WiPortを設定するときに連続稼働させるためのスイッチも設けています.
▲図1左下
WiPort用の3.3V生成回路です.稼働確認用にLEDを設けています.ケースに穴を開けて,このLEDの点灯を外から確認できるようにしています.
▲図1右下
WiPort本体の信号をかなり省略して書いていますが,WiPortの使わない信号線は未接続で構いません.出荷時に入力に設定されているGPIOやリセット入力は,WiPort内部にてプルアップされています.また,WiPortのメンテナンスに備えて,シリアル信号を取り出すための4ピン・コネクタもあると便利です.
▲電源部
単3乾電池3本で4.5V~5Vを供給します.製作する装置はWiPortとリレーで約400mAを消費し,待機時は0.11mAを消費します.稼働時の電圧降下を少なくするため,オキシライドなどの高性能電池を推奨します.