プロセッサの低消費電力設計 ――プロセッサの低消費電力化は,聖域なき総力戦
● スレッショルド電圧も可変に
困ったことに,電源電圧の低減には副作用があります.低電圧化が進むと,Vth(スレッショルド電圧)の低いトランジスタを採用することになり,これはリーク電流の増大という問題をもたらします.
これについては以前から,VTCMOS(variable threshold voltage CMOS)などの基板バイアスを使ったVth制御技術や,すでに述べた電源しゃ断という面から,複数のVthを使い分けるMTCMOS(multithreshold-voltage CMOS)技術などが対処法として挙がっていました.しかし最近では,待機時のリーク電流を制限するだけでなく,より動的に,動作時のVthも可変にしようという流れになってきています.
複数のVthを使い分けるという点では,設計の段階で,論理ブロック内の各パスのクリティカルさ(タイミングの厳しさ)を評価し,一つの論理ブロック内において異なるVthのトランジスタからなるゲートを使い分けるデュアル・スレッショルド手法も一般化してきています(とくに,プロセッサ・コアを搭載するシステムLSIなどで適用されている).もともとプロセッサ開発においては,トランジスタ・サイズを最適化するということは設計の基本だったのですが,それをVthのレベルまで拡張したものととらえられます.
さらに微細化が進んでいるため,ゲート・リーク電流なども大きな問題となりつつあります.この面では,材料の検討を含む低リーク・プロセスの開発が第1の対処法ですが,パワー・ゲーティング技術の併用も必要になるでしょう.