プロセッサの低消費電力設計 ――プロセッサの低消費電力化は,聖域なき総力戦
一つの軸は,低減させたい対象がリーク電流による電力消費なのか,実際の機能動作のための電力消費なのか,というものです.ここで,「待機時消費電力=リーク電流」というとらえかたでは,認識が不十分です.過去においてはこうした理解で十分だったのですが,微細化が進んだ先端プロセス,そしてそのようなプロセスで製造される最新のプロセッサでは,実行時のリーク電流もまた大きな問題となってきています.熱や電源の要求により,総消費電力の上限はある程度決まっています.こうした上限のある総消費電力から,リーク電流が多くの電力を盗み取ってしまうような状況に,すでに陥りつつあります.
リーク電流に電力を取られると,肝心の機能動作のために使える電力が減り,性能の低下をもたらすことになります.よってこの評価軸については,待機時や実行時といった単なる「時間的」なとらえかただけではなく,どのような経路で流れる電流への対策か,という「空間的」なとらえかたも加味しておいたほうがよいでしょう.
図1のカテゴリ分けのもう一つの軸は,設計時に決定される静的な手法か,実行時に動的に対処する手法かという点です.これも細かく見ていけば,設計時以前に決まってしまうプロセス技術やデバイス技術によるものから,ソフトウェアに依存するものまで,さまざまな手法が含まれます.つまり,単純に2分できるものではありません.図1は,あくまでも大ざっぱな分類を示すものと考えていただければと思います.