あなたが設計したLSIから秘密情報が漏れてます ―― 暗号回路のトレンドはアルゴリズムの標準化から実装の安全性評価へ
● 共通かぎ暗号のDESと公開かぎ暗号のRSA
Alan Turing(1912年~1954年)率いる英国の暗号解読チームは,さまざまな手がかりと数学・言語学などの知識を駆使して,Enigmaをはじめとするドイツ軍の暗号を次々と破っていました.また,彼らは暗号解読のために世界初のコンピュータ「Colossus(コロッサス)」を製作しています.
第2次世界大戦後しばらくは,軍事用の武器に相当するとして,暗号の使用に強い制限が課せられていました.それからしだいに規制が緩和され,今では業務から日常生活まで,用途に応じてさまざまな暗号アルゴリズムが利用されています.その中で,とくに有名なアルゴリズムとして,DES(Data Encryption Standard)とRSAが挙げられます.DESは,1977年に米国の連邦標準として制定され,現在,暗号製品の8割以上に実装されていると言われています.また,RSAはDESと同じ年に米国Massachusetts
Institute of Technology(MIT)のRivest,Shamir,Adlemanらによって開発されました.RSAは彼らの頭文字を取って名づけられました.この3人はその功績が認められ,2002年にコンピュータ・サイエンスのノーベル賞と称されるチューリング賞を受賞しています.
DESは共通かぎ暗号で,高速なデータ処理を行います.共通かぎ暗号は,暗号化と復号に同じかぎを用いる方式です.一方,RSAは公開かぎ暗号に属します.これは,暗号化に「公開かぎ」,復号に「秘密かぎ」という二つの異なるかぎを使用します.公開かぎ暗号はデータ処理が低速ですが,その反面,共通かぎ暗号では対応できないかぎ交換やディジタル署名などに利用できます.