クルマの中の"組み込み技術" ――写真で見る最新組み込みシステム
1) 前方車追従機能
写真3のエンブレム(トヨタ自動車のマーク)の奥には,ミリ波レーダが配置されています.このミリ波レーダの電波が前を走行する自動車に反射して返ってくるまでの時間を測定することで,車間距離を測ります.このデータをもとにブレーキやアクセルを制御して,前方車両との距離を一定に保つように走行します.このような機能を「レーダ・クルーズ」と呼びます.
このレーダ・クルーズとシートベルトなどの制御を合わせて,「プリクラッシュ・セーフティ」という機能を実現しています.この機能は,車間距離の情報をもとに,障害物と衝突する危険性があると判断すると,ドライバに警報を出します.また,必要に応じてシートベルトの巻き取りや衝突速度を抑えるためのブレーキングなどを自動的に行って,衝突の被害を軽減する支援を行います.
このプリクラッシュ・セーフティ・システムだけを見ても,ブレーキ制御用ECU,エア・サスペンションECU,プリクラッシュ・シートベルトECU,プリクラッシュ・セーフティECUといった四つのECUが使用されています.(図2).
写真3 AFSとレーダ・クルーズ
エンブレムの奥にはミリ波レーダが配置されており,ここから出される電波の反射時間を利用して前方を走る車や障害物との距離を測定する.外側のヘッドライト(ロー・ビーム)の照射軸をハンドル角や車速に応じて調整することで,カーブを曲がるときの視認性を向上させる.
図2 クルマの頭脳ECU(2)
トヨタ自動車のクラウン マジェスタのプリクラッシュ・セーフティ・システム(レーダ方式)の構成.このシステムを実現するだけでも,四つのECUが必要になる.なお,図中の白線認識用カメラは,メーカ・オプションの「車線維持支援(LKA:Lane Keeping Assist)」という機能を装備した場合に取り付けられる.この機能は,CMOSカメラで取り込んだ車線(白線)の画像から位置情報を割り出して,自動車が車線からそれないように電動パワー・ステアリングを制御する.