クルマの中の"組み込み技術" ――写真で見る最新組み込みシステム
1."組み込み"の定義
エレクトロニクス業界では,「組み込み機器(embedded system)」,「組み込みソフトウェア(embedded software)」,「組み込みプロセッサ(embedded processor)」といったことばが頻繁に使われています.ここでいう「組み込み(embedded)」とは,いったいどのようなものを指しているのでしょうか.
組み込み機器とは,おおざっぱに言ってしまえば,「コンピュータ(マイクロコントローラ)が内部に組み込まれており,そのコンピュータに特定のアプリケーションに特化した処理を行わせる電子装置」です(図1).例えば,携帯電話はマイクロコントローラに音声処理や通信プロトコル処理などを行わせる組み込み機器ですし,ある種の炊飯器はお米の状態に合わせておいしくご飯が炊きあがるようにマイクロコントローラでおかまの中の状態を制御する組み込み機器です.ハイビジョン・テレビやDVDレコーダなど,ディジタル家電と呼ばれる製品の多くも組み込み機器です.一方,パソコンは,ソフトウェア・プログラムを入れ替えることによってさまざまな用途で使用可能になる汎用機器です.これは,組み込み機器ではありません.
以前はマイクロコントローラなどを搭載せず,機械的な機構(あるいはごく少量のディスクリート部品と電気配線)のみで制御されていた機器が,利用者の利便性や安全性の向上,および開発期間の短縮を理由に,今では組み込み機器になっているというケースも少なくありません.この背景には,マイクロコントローラの低価格化と電子機器が搭載する機能の多様化・複雑化があります.
図1 いたるところに組み込み技術
生活の中で何げなく使っているものの多くに組み込み技術が用いられている.組み込み技術とは,マイクロコントローラ(とソフトウェア・プログラム)を用いて,特定のアプリケーションに特化した処理を行わせる技術である.パソコンなどの汎用コンピュータは組み込み技術に含まれない.