テストの本質を探る ――30年の歴史を持つ 「ソフトウェア工学」の知恵に学ぶ
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◆ソフトウェア・テストの歴史◆
1950年代(それはソフトウェアが誕生して間もないころだが...),テストとデバッグ(不ぐあいの除去)は区別されていませんでした.つまり,テストとはデバッグ行為そのものだったわけです.言い換えると,体系的にテストされていたわけではないということになります.1960年代に入って,テストとデバッグが区別されるようになりましたが,これらはあくまでも開発の終盤においてのみ行われる確認行為にとどまりました.このころまで,多くのソフトウェアは規模もまだ小さく,テストに対する意識も低い時代でした.
1970年代に入ると,規模と複雑さの増大に対する意識が高まってきました.それに伴って誕生した「ソフトウェア工学」では,より体系立ったテスト手法に関する議論が行われるようになりました.最初の国際的なテストに関する会議は,1972年でした.また,Myersの有名な書籍である「ソフトウェア・テストの技法4)」もこの年代に書かれています注A.
1980年代には「品質」がキーワードとなりました.多くのソフトウェア開発やテストに関する標準もこのころ生まれています.1990年代には,テストのための自動化ツールが生まれます.これ以降,自動化ツールは部分的に使用されるようになってきました.また,1990年代後半以降のWebシステムの広まりとともに,異なった種類のテスト,すなわちネットワークの負荷やセキュリティに対するテストが必要となってきています.
注A;本書の中に,「実際,ソフトウェア開発のほかの分野と比較してみても,ソフトウェアのテスト方法については,まだまだ知られているところが少ないように見受けられる」,「いろんなときに,教授や助手たちがこういうのを耳にする."われわれの学生は,プログラムのテスト法についてのなんら実際的な知識もないままに卒業し,企業に就職してしまう"」といったコメントがある.1978年に書かれたこの本と25年後の今を比較すると,現象的にはあまり変わっていないのかもしれない.