テストの本質を探る ――30年の歴史を持つ 「ソフトウェア工学」の知恵に学ぶ
「あんちゃん,やったな.やると思ってたよ」.男が肩をたたく.強く,倒れそうになるほど....
しびれる体にフラッシュ・バック.脱走者3名,病院送り2名,徹夜明けのミーティング.「なぜ,データがないんだ.いつまでテストをやっているんだ」.よそ者のざれ言.
システムの使いかたを明確にした.仕様を厳密化した.作る前に必要な網羅が得られるようなテスト・ケースを書いた.何が正しいのかが,何をテストしなくてよいのかがわかった.
関係者のコミュニケーションを円滑にするツールを使った.そして,ウソの報告はやめた.
男の声に,われに返る.「実はダブルヘッダなんだ.そっちも手伝うよな」.軽いめまい.
開発プロセスを変えなくては....
参考・引用*文献
(1) Beizer B.;SOFTWARE TESTING TECHNIQES(2nd ed.),Coriolis Group,1990(邦訳,「ソフトウェアテスト技法」,日経BP出版).
(2) Thornton H. G.;On the development of a standardized agar medium for counting soil bacteria,Annals of Applied Biology,no.9,pp.241-274,1922.
(3) Prowell S., et al.;CLEANROOM SOFTWARE ENGINEERING, Addison Wesley Longman,1998.
(4) Myers G. J.;THE ART OF SOFTWARE TESTING,John Wiley & Sons,1979(邦訳,「ソフトウェア・テストの技法」,近代科学社).
いとう・まさお
(株)ニルソフトウェア
◆筆者プロフィール◆
伊藤昌夫.自動車会社,航空機関連会社のソフトウェア・エンジニアを経て,ニルソフトウェアを設立.ソフトウェア・プロセスおよび開発環境が専門で,そのためのコンサルテーションおよびツールの提供を行っている.設計における人間の認知活動に興味を持っている.