「組み込み」ならではの基礎知識 ――スタートアップ・ルーチンからハードウェアまで
●例:液晶時計
ディジタル回路は,このレベルとエッジを使って設計します.例として,電池を使った液晶時計を考えてみましょう.仕様は以下のとおりとします.
製品仕様(電源部抜粋):
- 電源:単三乾電池1本
- 電池警告:電池寿命が近づいたら警告表示を出す
- 電池交換:電池が抜かれたらただちに液晶表示を消して節電する.1分以内に交換すれば時刻は保持される
ハードウェア仕様(電源部抜粋):
- 電源:1.5Vのマンガン乾電池
- 論理回路の電源電圧:3V(±10%).電池電圧を昇圧(0.7Vから3.3V出力)
- リセット電圧注7-1:2.7V
- 低電圧検出:0.9V(電池電圧),ポートに接続
- 電池抜け検出:0.2V(電池電圧),割り込み端子に接続
ソフトウェア仕様(電源部抜粋):
- 低電圧検出はポートを1秒間隔でポーリングする.3回連続"L"レベルで電池警告とする
- 電池抜けは,立ち下がりエッジを割り込みで検出する
注7-1;リセット電圧とは,リセット信号が出力される電源電圧のこと.
このハードウェア仕様に基づいて設計した回路図を図7-2に示します.
電池を使う組み込み製品では,電池電圧をそのまま使うことはまれで,昇圧回路(電圧を上げる回路)を使って論理回路の電源電圧を作ります.さらに電池交換のときも記憶内容を1分間以上維持できる大容量コンデンサ(電気を蓄える部品)を付けています.