みんながシステム設計を気にする理由 ――システムLSI開発の視点から

山崎正実

tag: 組み込み 半導体

技術解説 2001年11月12日

●システム・レベル設計が無視できなくなった理由

 従来,組み込み機器では,マイコン(CPU),メモリ,専用LSI(ASIC)などの構成要素が別々のチップとして実現されていました.機能の複雑化に伴ってシステムが巨大になり,しだいにハードウェア開発とソフトウェア開発の分業と専門化が進みました.各開発グループはそれぞれの分野で設計効率の向上を追及し,それに伴ってお互いの関係は疎になっていきました.

 この間,CPUとASICの間のインターフェース仕様は,基本的にあまり変わりませんでした.1冊のインターフェース仕様書が,ハードウェアとソフトウェアを結ぶ懸け橋になりました.CPUとASICの間のインターフェース仕様がほとんど変わらなかった理由は,主に二つあると思います.第1に,ソフトウェアが巨大化したことにより,ソフトウェア・アーキテクチャの変更を伴うインターフェース仕様の変更が敬遠されたためです.第2に,汎用のマイコンを使う関係で,インターフェース仕様がCPUバスという一種の標準規格に縛られていたためです.

 LSI技術の進歩は早く,いまや制御用プロセッサ,データ処理用プロセッサ,データパス回路,ソフトウェアといった組み込み機器の構成要素を一つのチップに集約できるまでになりました.この技術が,携帯電話やディジタル・カメラなど,小型のハイテク機器を実現するためのキー・テクノロジになっています.

 CPUについては,ひと昔前の汎用大型コンピュータ(メインフレーム)の性能をはるかに上回るものを簡単に入手できるようになりました.そのため,従来はハードウェアでしか処理できなかった機能をソフトウェアで実現できるようになってきました.

 機器メーカに対する市場の要求は多様化し,かつめまぐるしく変化しています.開発期間(time to market)を短縮することと,市場要求の変化に追随できる柔軟なシステムを開発することが要求されています.その一方で,ASICの開発期間は延びる傾向にあります.これは,回路規模が大きくなったためと,微細化の影響によりレイアウト設計時にタイミングを収束させることが難しくなったためです.例えば数百万ゲートのASICでは,論理検証が完了してからサンプル・チップを入手するまで,半年近くもかかっているのが現状です.半年もたつと市場の風向きが変わってしまいます.相当うまく開発していかないと,完成したときには機能や性能が陳腐化していたということになりかねません.

 この点で,FPGAを利用する方法は有効です.ただし,FPGAを乱用すると,コストが上昇します.ASICを使いながらこの問題を解決するには,プログラマブルな部分(CPU)をASICに組み込む必要があります.機能をなるべくソフトウェア制御で実装し,ソフトウェアの追加や変更によって仕様の変化に対応するのです.こうすることによって,一度開発したASICを長持ちさせることができます.

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