みんながシステム設計を気にする理由 ――システムLSI開発の視点から
大げさなことばやわかっているようで意味不明のことばのことを英語で"big word"と言いますが,まさに「システム」ということばはbig wordの一つです.ふだん何げなく使っていますが,開発する対象によって「システム」ということばの定義が異なる場合が非常に多いのです.前述の相棒の例も,そうしたすれ違いから起こった悲劇です.ですから,「システムなんとか」なるものを議論するときは,システムとは何かを決めておく必要があります.
本稿ではシステム・レベル設計について議論しますが,取り扱う対象を「システムLSI」に限定します.「システムLSI」ということばもなかなか一筋縄ではいかないのですが,ここではアプリケーション・プログラムが動作するマイコンとメモリ,MPEGデコーダなどのメディア処理やモデム,プロトコル終端などの通信用DSPや専用ハードウェアなどから構成されるLSIを考えます.
一方,ソフトウェアについては,OSやアプリケーション・プログラムまで含めて考えると,話が大きくなりすぎます.開発対象によって事情は異なりますが,BIOSやドライバ・ソフトウェア,信号処理用ソフトウェアくらいが妥当ではないでしょうか.つまり,アプリケーション・プログラムやOSを実装するための基盤となるソフトウェアに限定して考えていきます(図2).
〔図2〕システム・レベル設計で扱える範囲
現状のシステム・レベル設計で扱うソフトウェアは,BIOSやドライバ・ソフトウェア,信号処理用ソフトウェアくらいの大きさにするのが妥当.