小型組み込み機器向けLinux ──MMUを持たないマイクロプロセッサで動作するしくみ
◆◆◆コラム◆◆◆ uCLinuxの誕生
1997年ごろ,Lineo Canada社(旧Rt-Control社)で筆者らは,マイクロ波通信システムとEthernetの間でデータ通信を行う安価なネットワーク・コントローラを開発していました.このネットワーク・コントローラの中にMMUを持たないマイクロプロセッサを組み込んでおり,ここにLinuxを実装する可能性を模索していました.初期のuClinuxは,SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)コントローラでも採用され,Palm Pilotの代用OSとして,1998年2月にオープン・ソース・コミュニティに公表されました.筆者らは後に,uClinuxのコンパクトなコード・サイズの長所を生かした組み込みコントローラであるuCsimmとuCdimmを設計しました.
一方,Lineo Australia社(旧MoretonBay社)では,uClinuxをMotorola社のColdFireに実装しました.これはLineo社のNetTELやSecureEdgeルータ(写真A)などのVPN (virtual private network)インターネット機器として製品化されています.
uClinuxカーネルは,これまで複数のCPUアーキテクチャに実装されてきました.スウェーデンのAxis Communications社のネットワーク・カメラやフランスのAplio社のVoice over IP(VoIP)電話などで採用されています.
Lineo社,Aplio社,Axis社の技術者,およびオープン・ソース・コミュニティのメンバによる上記の成果は,Lineo社のWebサイトで確認することができます(http://opensource.lineo.com/).
〔写真A〕SecureEdgeルータ